かぶり厚さ不足はどうなるの

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現場施工において多くの方が真っ先に担当する工事は、鉄筋工事ではないでしょうか。

鉄筋工事においては、「かぶり不足は法違反」を合言葉にかぶり厚さの確保が求められています。

かぶり厚さはなぜ決められているのか、かぶり厚さが不足するとどういう不具合が現れるのかを文献や私の知見をもとに説明していきます。

目次

かぶり厚さ不足による影響

結論から言うと、かぶり厚さ不足による影響は大きく2つあります。

それは、耐火性能の低下コンクリートの付着割裂破壊、そして、中性化進捗に伴う鉄筋の腐食です。

かぶり厚さとは

かぶり厚さとは、鉄筋コンクリート工事、鉄筋鉄骨コンクリート造において、鉄筋または鉄骨の表面とこれを覆うコンクリートの表面までの鉄筋の最短距離のことです。

つまり、柱主筋や梁主筋からではなく、それら主筋の外を囲む帯筋やあばら筋からの距離となります。

かぶり厚さを確保するために、鉄筋組立後、型枠等との隙間に通称ドーナツやサイコロと呼ばれるスペーサーを設けます。

かぶり厚さの規定

建築基準法施行令による規定

かぶり厚さの最小値は『建築基準法施行令』にて、部位等により、以下のように規定されています。

かぶり厚さ規定(建築基準法施行令)

公共建築工事標準仕様書による規定

公共建築工事標準仕様書では、最小かぶり厚さを以下のように記載しています。

標仕かぶり厚さ

また、「柱、梁等の鉄筋の加工に用いるかぶり厚さは、最小かぶり厚さに10mmを加えた数値を標準とする。」と記載されています。

JASS5による規定

日本建築学会の発行の『JASS5 鉄筋コンクリート工事』では、かぶり厚さを以下のように規定しています(計画許容期間が標準の場合)。

※表の右に先ほどの建築基準法施行令による最小かぶり厚さも併記します。

JASS5かぶり厚さ

かぶり厚さの規定に関する考察及び補足

かぶり厚さの規定は、「建築基準法施行令のかぶり厚さ規定<標準仕様書≒JASS5の最小かぶり厚さ<標準仕様書加工に用いるかぶり厚さ≒JASS5の設計かぶり厚さの順に大きくなっています。

これは、標準仕様書及びJASS5のかぶり厚さの規定が建築基準法施行令で示すかぶり厚さの規定を確実に満足するように規定されているためです。

またJASS5による規定は、環境条件や建物の計画許容期間等を考慮して割増した最小かぶり厚さとさらに、鉄筋加工や施工精度を考慮した設計かぶり厚さが規定されているためです。

また、公共建築工事標準仕様書とJASS5についてですが、一般には、別物の規定と考えておく方が望ましいといえます。どちらを優先すべきか、と聞かれれば前者と答えます。

従って、一般にかぶり厚さの規定といえば標準仕様書またはJASS5の規定で設計、監理、施工されます。

標準仕様書及びJASS5の規定にある「仕上げのあり・なし」についてですが、ここも両者により、解釈が異なっています。

標準仕様書は、表欄外にも記載している通り、モルタル塗り等として、仕上げ塗材及び塗装は明確に否定してます。
一方、JASS5ですが、耐久性能上有効な仕上げは一般的には、モルタル塗りや石材等の仕上げとしています。

しかし、仕上げ塗材や塗装についても、「薄塗の仕上げ塗材や塗装にも中性化抑制効果が期待されるものがあり、これらを耐久性能上有効な仕上げとして扱う場合は、中性化進行の予測を計算する必要があります。」と条件付きの元採用することもできるとしています。

鉄筋コンクリート造の耐火性能とかぶり厚さ

コンクリートに比べ、鉄は熱に弱いです。

そのため、鉄筋コンクリート造では、鉄筋をコンクリートで被覆しています。

火災等が発生すると、コンクリートの表面から徐々に温度が上昇していき、やがて、内部鉄筋も温度が上昇していきます。

かぶり厚さが不足していると、鉄筋の温度上昇も高くなるので、当然のことながら、耐火性能が低下します。

コンクリートの付着割裂破壊とかぶり厚さ

コンクリートの付着割裂破壊とは

あまり、聞きなれない破壊状態かもしれませんが、鉄筋とコンクリートの摩擦抵抗(付着力)によるひび割れです。

鉄筋がコンクリートに半分だけ埋まっていて、その鉄筋を引き抜くイメージを持ってみてください。

引き抜く力が、鉄筋とコンクリートの付着力より大きくなると、鉄筋は抜け出します。

しかし、かぶり厚さが少ないとどうなるでしょうか。鉄筋が引き抜ける前にコンクリートにひび割れが発生してしまします。

この破壊状態を付着割裂破壊と呼びます。

中性化の進行とかぶり厚さ

コンクリートの中性化とは

まず、コンクリートは強アルカリ性です。

しかし、コンクリートは一般的な環境条件において、空気中の二酸化炭素の作用により、アルカリ性を示す内部物質が徐々炭化していきます。その結果、コンクリートのアルカリ性が低下する現象をコンクリートの中性化といいます。

そのため、コンクリートの表面から徐々に中性化が進行していくことになります。

一般的な環境により中性化は進行するので、完全に防ぐことはできません。しかし、中性化によって、コンクリート強度自体に影響を与えることはあまりありません。

鉄筋に与える影響は

では、コンクリートの表面から中性化が進行していき、内部の鉄筋まで到達したとき、鉄筋にどのような影響を与えるのでしょうか。

鉄筋位置まで中性化が進行すると、アルカリ性を失われているので、酸素と水分が供給されることにより、鉄筋が腐食します。

鉄筋の腐食、つまり、さびの発生ですが、さびが発生すると鉄筋の体積がその分膨張するので、覆っていたコンクリートを押し出そうとします。

その結果、コンクリートにひびが入ります。コンクリートにひびが入ると、さらに酸素と水が供給されるので、鉄筋の腐食が進行し、やがて、コンクリートの剥離となります。

また、鉄筋自体が腐食すると、鉄筋の耐力も低下していきますので、建物の構造耐力の低下につながってきます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

「かぶり不足は、法違反!かぶり厚さは絶対に守らないければならない。」確かに、このように強く認識していただくことは重要です。

ただ、かぶり不足がどのような影響を与えるのか。を知っておくことも技術屋として、とても重要なことではないでしょうか。

最後に、

かぶり厚さは、過大すぎても構造体に悪影響を与えます。

かぶり厚さ過大による悪影響を次回エントリーしていきます。

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