呼び強度とは?|コンクリートの強度用語を徹底解説

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コンクリートは建築の代表的な建材の一つです。

ただ、他の建材と異なり、現場納入時は未固結の生もので、建物に必要な強度確保はこうしてみないと最終的には判断できないという特殊な材料でもあります。
こういった、硬化後のコンクリートの強度を担保するために、生コンクリートの配合には製造のばらつきを考慮してその強度を決めています。

今回は、コンクリートの強度の呼び方の一つである『呼び強度』について解説していきます。

目次

呼び強度とは

呼び強度とは、コンクリート強度の呼び方の一つで、コンクリートを発注するときに用いる圧縮強度のことです。

少し、遠回しな言い方な気がしますでしょうか。
コンクリート強度による名称の違いは次の章から解説していきますが、コンクリートは建築の場合、設計基準強度を基準に構造体補正値を加味して建築現場でも用いる調合管理強度が決められていきます。

呼び強度=調合管理強度でいいではないかということになるかもしれませんが、そういうわけにはいきません。

コンクリートは指定建築材ですので、JISに適合するものか大臣認定品を使う必要があります。
仮にJIS規格品を採用したいとした場合の例を紹介します。

※JIS規格品(JISマーク)とJIS規格外品(JIS適合品)などいろいろとややこしいことがあるのですが、それはまた別の記事にします。

JIS規格品とは、生コン工場(プラント)が製造するコンクリートのうち、JIS A 5308に適合するものとして、承認を受け、JISマークを表示できる配合のコンクリートのことです。

JIS規格品は、強度や配合ごとに承認を受ける必要があるので、生コン工場でも一般的な強度や配合のコンクリートしかJISマークの承認を受けていません。

つま、調合管理強度の強度のコンクリート配合を使用する生コン工場においてJIS規格品として承認を受けてないことも十分にあり得ます。

そこで、設計図書の設計基準強度Fc24に補正値を足して調合管理強度27N/㎟(その他スランプ等の指定もあります)のコンクリートを使用したいという時に、JIS規格品がないので、強度を上げて工場がJIS規格品として認定を受けているの30N/㎟のコンクリートを採用するということになります。

この時の30N/㎟が呼び強度となります。

呼び強度とは、生コン工場に発注する強度のことで、調合管理強度以上の強度のものということになります。

もちろんこの時に、生コン工場が27N/㎟の強度のJIS規格品も保有していて、それを発注した場合は、呼び強度=調合管理強度となります。

コンクリートの強度名称の違い

コンクリートには設計基準強度、調合管理強度、呼び強度といった様々な名称が存在します。
それぞれの名称が互いに関係しているので、この名称の違いを理解することがコンクリート工事の第一歩です。

コンクリートの強度などによる呼び方とその関係性は次のようになります。

耐久設計基準強度と設計基準強度

まず、設計図書において、耐久設計基準強度Fd設計基準強度Fcが記載されています。

設計基準強度Fcは聞いたことあるけど耐久設計基準強度Fdは聞いたことないという人もいるかもしれません。
耐久設計基準強度Fqとは、建物の計画供用期間によって定めた強度で、JASS5において以下のように定義されています。

耐久設計基準強度と供用年数の級と耐久設計基準強度(Fq)
  • 短 期:Fd18
  • 標準期:Fd24
  • 長 期:Fd30
  • 超長期:Fd36

供用年数が長くなると劣化、中性化などの進行もありますので、構造強度だけでなく、耐久性を考慮した強度を採用しましょうというものです。

一方、設計基準強度Fcとは、構造設計に用いる圧縮強度のことです。
設計基準強度で建物は構造設計されてますので、この強度を下回ると、構造上の不具合が発生する可能性があります。

つまり、設計図書で指定される強度は、耐久設計基準強度と設計基準強度です。
また、その2つの大きい強度を品質基準強度Fqと呼びます。

ただ、耐久設計基準強度はJASS5の定義によるものなので、適用図書として広く用いられる『公共建築工事標準仕様書』には、耐久設計基準強度という言葉は登場しません。

したがって、品質基準強度という言葉もなく、設計基準強度だけが登場しますので、耐久設計基準強度の知名度が少し低いかなと思います。

調合管理強度

次に調合管理強度Fmです。

設計基準強度や耐久設計基準強度を下回ると建物耐力に不具合が生じる可能性があることは先ほど説明しました。
コンクリートは、工場製造で生ものですので、製品バラつきが必ず生じます。
さらに、実際に打ち込まれたコンクリートをコア抜きして圧縮試験することはほとんどの場合せずに、コンクリート打設時に圧縮試験用に供試体を採取して、強度試験を実施します。

このように、コンクリートは様々な要因で強度がバラつくのですが、強度がばらついても設計基準強度を確保する必要があります。
そこで、構造体強度補正値mSnを加味した強度を調合管理強度と呼びます。

構造体補正値の値は季節やコンクリート強度によっても変化しますので、その詳細は今回説明を省略します。構造体補正値についても記事をあげますので、そちらでご確認いただければと思います。

生コン工場は、この調合管理強度をもとに配合計画書などを作成してことになります。

呼び強度

最後に、呼び強度Fです。
いよいよ今回のテーマである呼び強度が登場しました。

呼び強度とは、冒頭でも説明したように、発注する際の強度ですので、調合管理強度以上の強度のものを指定します。
調合管理強度と同じ強度になることもあれば、JIS規格品に合わせて強度を上げたコンクリートになることもあります。

生コン工場にこの強度(実際の指定は強度だけでなくスランプ値、混和剤などもあります)で持ってきてくれと指定するための強度のことです。

工事現場では呼び強度、管理では設計基準強度

呼び強度についてなんとなく理解いただけたでしょうか。

工事現場において、商社や生コン工場に強度を指定するとき、現場ごとの配合計画書に基づいた呼び強度で指定することになります。

しかし、強度担保の管理上では、調合管理強度または設計基準強度が指標になります。

現場監督はどの強度で管理するのかということを理解しておかなければなりません。

例えば、支保工を所定の材齢を待たず圧縮強度で判定して早期解体を行いたい場合です。
『公共建築工事標準仕様書』では、スラブ下の支保工を圧縮強度による判定で解体する場合は、以下のように記載されています。

圧縮強度が設計基準強度 (Fc)の 85%以上又は 12N/㎟以上であり、かつ、施工中の荷重及び外力 について、構造計算により安全であることが確認されるまで

引用元:公共建築工事標準仕様書(建築工事編)平成31年版

この場合、判定するのは設計基準強度です。
調合管理強度や呼び強度でないことに注意が必要です。

また、今回は型枠支保工の解体を例に挙げましたが、コンクリート圧縮強度の管理は、「調合管理強度の判定」と「構造体コンクリート強度の判定」も「公共建築工事標準仕様書」では規定されています。

調合管理強度の判定は調合管理強度で管理しますし、構造体コンクリート強度の判定は供試体の養生方法によって、調合管理強度で管理するか設計基準強度で管理するかが変わってきます。

どの強度を持って、圧縮強度の管理を行うのかもコンクリートの各種強度による名称と合わせて理解しておくことが重要になります。

おわりに

今回は呼び強度とはについて解説しました。
また、呼び強度を解説するためにも不可欠な設計基準強度や調合管理強度についてもその関係性を簡単に触れてきました。
それぞれのコンクリート強度名称はまた別の記事で解説していきます。

コンクリートは、今回紹介しているような強度による名称の違いだけでなく、JIS・標準仕様書・JASSなどの文献による違い、試験方法の違い、JIS規格品とJIS適合品と大臣認定品といった違いなど頭が混乱しそうな違いが非常に多いです。

私もすべてを把握できてるわけではありませんが、まずは違いがあることを理解して、現場ごとに今回のコンクリートはどういった管理するのだろうと個別に確認するようにしましょう。過去の現場の管理を流用していると、大変な目にも遭います。
コンクリートが硬化してしまった後にそれに気づいてしまっては、もう目も当てれません。

しっかりと理解して、良いコンクリートを打っていきましょう。

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