クレーンの落成検査ってなに?関連法・規則からその必要性を紐解く

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建設工事において、タワークレーン等の組立を行う場合、落成検査を受けることが求められる場合があります。
ここでは、「落成検査とは?」、「落成検査が必要なクレーン?」、「落成検査の一連の流れ」を紹介していきます。いざ、落成検査が必要となったときに慌てて準備することがないように流れを理解しておきましょう。

今回は全体の流れですが、今後複数回に分けてクレーンの設置届・落成検査については記事をUPしていく予定です。

目次

落成検査とは?

落成検査とは、一定以上の性能を有する設置型クレーン等(タワークレーンなど)の組立・設置工事が完了(落成)したときに労働基準監督署が実施する検査のことです。

落成検査については、労働安全衛生法のクレーン等安全規則の中で定められています。

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(落成検査)
第六条 クレーンを設置した者は、法第三十八条第三項の規定により、当該クレーンについて、所管労働基準監督署長の検査を受けなければならない。ただし、所管労働基準監督署長が当該検査の必要がないと認めたクレーンについてはこの限りではない。

出典元:クレーン等安全規則 第六条 第一項

落成検査が必要なクレーン等

落成検査が必要なクレーンとは、現場組みを行う、タワークレーンやレール走行クレーンなどで設置届が必要なクレーンのことになります。

設置届かを判断する具体的なクレーンの性能や条件については、クレーン等安全規則および労働安全衛生法施行令により定められております。

(製造許可)第三条 第一項
クレーン(令十二条 第一項 第三号のクレーンに限る。以下本条から第十条まで、第十六条及び第十七条並びにこの章第四節および第五節において同じ。)を製造しようとする者は、~

クレーン等安全規則 第三条 第一項

まず、さきほども上げたクレーン等安全規則には上記のような条文があります。法令あるあるの”並びに、及び”が乱立したわかりにくい文章ではありますが、( )内を読んでください。

落成検査については、先ほどクレーン等安全規則の第六条で記載されていました。第六条も( )の文章から令十二条 第一項 第三号のクレーンに限るが適用されています。

ここでの令十二条 第一項 第三号とは、労働安全衛生法施行令のことになります。令十二条は特定機械等の項目になり、その中に特定機械として扱うクレーンの規格が以下のように規定されています。

(特定機械等)第十二条
法第三十七条第一項の政令で定める機械等は、次に掲げる機械等(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)とする。
(中略)
三 つり上げ荷重が三トン以上(スタッカー式クレーンにあっては、一トン以上)のクレーン

出典元:労働安全衛生法施行令

つり上げ荷重が3t以上のクレーンが適用であることが分かります。

つまり、つり上げ荷重が3t以上のクレーンを設置する場合は、設置届の提出設置後に落成検査を受ける必要があります。

ここで、注意が必要なのは、つり上げ荷重が3tというのはクレーン自体の性能のことを言ってます。
現場の揚重において、3tまでは吊らないではなく、3t以上を揚重できる性能があるクレーンは対象であることになります。

なお、つり上げ荷重が3t未満のクレーンにおいても設置報告届が必要なクレーンもありますので注意してください。

移動式クレーンは対象外

また、クレーンについてはタワークレーンだけでなく、トラッククレーン(オールテレーンクレーン・ラフタークレーンなど)、クローラークレーンといった建設現場で用いるクレーンにおいても現場組みが必要になるものがあります。

クローラークレーンなどは設置届の対象ではないのでしょうか。

結論から言うと、ラフタークレーン、クローラークレーンといった移動式クレーンに該当するクレーンは対象外となります。

※ただし、移動式といっても、天井クレーンやレール走行可能な定置式クレーンは一定以上の吊り能力を有している場合は対象になります。
あくまでオペレーターが操作して走行できるクレーンは対象外となります。

なお、製造メーカー自体はクレーン製造後に試験、点検は必須になりますので、移動式クレーンは製造元で検査されることになります。

落成検査までの現場でやること

クレーンの設置届に話を戻します。
設置届、落成検査が必要なクレーンを設置する場合、必要な書類・手続きは以下のようになります。
書類等の提出の日付なども決まりがあるものありますので、忘れずに準備しましょう。

設置届

クレーンを設置開始する30日前までに機械等設置届を所管労働基準監督署に提出が必要となります。クレーン設置開始1日目から数えて30日前までの提出です。

それまでに、クレーンの選定、クレーン会社と打合せをして、クレーン組立計画図などの作成、設置届に必要なクレーン構造を示した図面など準備をしておきましょう。

なお、設置届の内容などの詳細については別記事でエントリーしていきます。

クレーン落成検査申請書

クレーン設置届と同じタイミングで提出することが多いですが、落成検査の申請書というものが、設置届と別の様式であります。

落成検査予定日(クレーン設置完了後翌日など)を記載して、労働基準監督と落成検査日程の事前相談をしておきましょう。

また、落成検査には手数料が必要です。必要な手数料分の収入印紙をこの落成検査申請書に貼り付けることになりますので、忘れずに準備しておきましょう。

落成検査の一連の流れ

いよいよ、落成検査当日です。落成検査での検査内容についても、クレーン等安全規則にて定められています。

(落成検査)第六条 第二項
前項の規定よる検査(以下この節において「落成検査」という。)においては、クレーンの各部分の構造及び機能について点検を行うほか、荷重試験および安定度試験を行うものとする。ただし、天井クレーン、橋形クレーン等転倒する恐れのないクレーンにおいては、荷重試験に限るものとする。

出典元:クレーン等安全規則

ここで、3つの検査項目が出てきました。

落成検査の検査項目
  • 構造および機能の点検
  • 荷重試験
  • 安定度試験

構造及び機能の点検

構造、機能の点検とは、事前に提出している設置届と相違がないか、部材の損傷などが生じている箇所はないかを確認していきます。

荷重試験および安定度試験においては、クレーン等安全規則においてどういった試験を行うのかが記載されています。

(落成検査)
第六条 第三項
前項の荷重試験は、クレーンに定格荷重の一・二五倍に相当する荷重(定格荷重が二百トンをこえる場合は、定格荷重荷重に五十トンを加えた荷重)の荷をつって、つり上げ、走行、旋回、トロリの横行等の作動を行うものとする。
第六条 第四項
第二項の安定度試験は、クレーンに定格荷重の一・二七倍に相当する荷重の荷をつって、当該クレーンの安定に関し最も不利な条件で地切りすることにより行うものとする。この場合において、逸走防止装置、レールクランプ等の装置は、作動させないものとする。

出典元:クレーン等安全規則

荷重試験

荷重試験とは、クレーン定格荷重の1.25倍相当の荷重を実際につり上げすることになります。

試験に用いるウエイトは事業者で用意する必要があります。

また、定格荷重は最大作業半径での定格荷重と最小作業半径での定格荷重と行いますので、2パターンの試験ウエイトが必要になります。

また、この際に、現場敷地からクレーンが出ないように規制をかけている場合などの規制装置が働くかの性能確認も併せて行うことになります。

安定度試験

安定度試験とは、クレーン定格荷重の1.27倍相当の荷重のつり上げにとなります。

安定度試験では地切り程度(荷が少し浮いた状態)までで性能を確認します。
過荷重であるので、万が一に備えた試験となっています。確認することとして、クレーン設置部(台座)の浮き上がりがないことの確認です。

また、ここで施工計画を作成するために注意してほしいのですが、クレーンの施工計画においては、定格荷重で計画を立てることです。

クレーンも製造物ですので、安全率は必ず考慮されてます。試験においては1.25倍という過荷重でクレーンのリミッターを切って試験します。
しかし、施工計画において1.25倍まで揚重できるわけではないのでくれぐれも間違えないようにしてください。

さらに、クレーンの定格荷重とは、吊り治具を含めた定格重量です。実際に揚重できる資材は、吊りフックや吊り治具を差し引いた重量になりますのでクレーン計画の際には余裕をもった計画をお願いします。

おわりに

落成検査について説明していきました。

落成検査が必要なクレーンは設置後、落成検査を受けないと使用ができません。落成検査を実施しないまま使用したり、設置届の提出が遅れた場合、是正指示書などが出されることもあるかもしれません。必要な提出書類、スケジュールを把握して、適正な現場管理に努めましょう。

今回の記事は、落成検査とは?、落成検査までにすることといった紹介的な記事となりました。設置届に必要な書類、落成検査の見るポイントなどは別記事でエントリーしていく予定です。興味がありましたら、またご覧になってください。

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