足場に作用する鉛直荷重に対する強度検討

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足場は作業床として、多くの現場で見かける基本の仮設構造物です。

仮設構造物ではありますが、強度検討が不十分であったり、現場管理に不備が倒壊などの災害が発生してしまうと、その影響はとても大きなものになります。
場合によっては、人命にもかかわる大きな事故にもつながりかねません。

足場の強度計算というと、風荷重に対する強度計算を思い浮かべると思いますが、そのほかにも、足場の作業床に載荷する積載荷重、足場全体に作用する鉛直荷重、梁枠部の強度計算など様々な強度計算が求められます。

今回は、足場全体の鉛直力の計算について、計算の方法を解説していきます。

※なお、足場に作用する風圧力に対する強度検討については、参考になる「Excel版の風荷重強度検討書」と「足場に作用する風圧力強度検討の解説」を別記事でエントリーしてますので、ご覧ください。

それでは、さっそく足場の強度検討(主に、鉛直力について)を説明していきます。

目次

足場の強度計算

足場の計算には、序章でも述べましたが、以下のようなものがあります(これ以外にもあります)。

足場計画に必要な計算
  • 風荷重に対する足場強度検討
  • 鉛直力に対する足場(ジャッキベース)の強度検討
  • 梁枠部の建枠・支柱の強度検討
  • 作業床に作用する積載荷重の検討
  • 荷取ステージを設ける場合の積載荷重検討

足場は仮設材であることから、組立・撤去が容易なことも重要な要素の一つです。

しかし、工事期間中のおよそ1年程度は設置されることがある建物の一部・外装材の一部としてみることもできますので、強度検討が重要になります。

足場を構成する材料一つ一つは、仮設工業会認定品などとして、所定の耐力が担保されてますが、風圧力や積載荷重といった外力はその計画によって左右されます。

足場の鉛直力の計算

足場に作用する鉛直力の代表的なものとしては、足場全体に作用する荷重で、一番下部の建枠・ジャッキベースを検討するものがあります。

また、足場1スパン当たりの積載荷重について、メーカーの許容耐力だけではなく、安衛法でその荷重規定が決まていることもあります。

まず、足場自体の強度検討においては、様々な諸規定に適合しているのであれば、特段の強度検討は必要ないとされております。

足場の許容耐力は先ほどのべたように、労働安全衛生法やJIS,JASS、仮設工業会などで足場全体の構造物としておよび単独材料として規定されているためです。

それでは、足場の強度計算を実施する必要がある状態とはどのような状態をいうのでしょうか。

足場の鉛直力に対する計算
  • 足場高さが45mを超えるような足場
  • 過大な積載荷重を載荷したい足場
  • 張出し足場、梁枠などの足場
  • メッシュシートを張るなど風荷重が過大となる足場(※今回の鉛直力ではない)

以上にような項目が足場の強度検討を別途確認すべき事項になります。

計算によって、施工条件に制限がついたり、日常の管理・点検が重要になりますので、強度計算はどういう方法で実施されているのかを把握しましょう。

検討① 足場1スパンの積載荷重に対する検討

足場に作用する鉛直力として、積載荷重があります。
積載荷重は、足場にもその最大値が表示されてますので、よく見られたことはあると思います。

足場1スパンあたりの積載荷重と許容耐力

足場の1スパンあたりに載荷できる最大積載荷重は、布板の許容積載耐力によって定まることが多いです。まず、布板にはその幅によって積載荷重が決まっております。

  • 布板(幅500mm)・・・耐荷重250kg/枚
  • 半布板(幅240mm)・・・耐荷重120kg/枚 となります。

したがって、枠組足場の場合は、
600幅の場合:布板1枚ですので、最大積載荷重250kg/スパン
900幅の場合:布板+半布板ですので、370kg/スパンと布板の許容耐力によって定まっています。

しかし、1200幅の建枠においては、最大積載荷重は400kg/スパンです。これは、労働安全衛生規則によって以下の条文があるためです。

労働安全衛生規則 571条1項4号

建地間の積載荷重は、400キログラムを限度とすること。

(出典:労働安全衛生規則)

ただ、枠組以外の足場、つまり単管足場や最近枠組足場に代わる次世代足場として多く用いられるようになった、くさび式緊結足場はこの限りではありません。

単管足場やくさび式緊結足場を強度検討する場合は、積載荷重を250kg/スパンとするのが一般的です。
くさび式緊結足場は、メーカーによって許容耐力が定義されておりますが、「連続スパン載荷の場合250kg、それ以外の場合は400kg」と記載されていたりします。メーカーの基準に即した、積載荷重の管理をお願いします。

現場管理においては、足場の強度計算を積載荷重400kgとして、検討するのであれば、連続スパンでそれぞれ400kg以上のものが載荷していないかが管理ポイントとなります。

足場には、作業員の荷重だけでなく、材料を仮置きしたりもしますので、思いがけない重量が作用します。
材料を置く場合も、単管パイプであれば大体何本で何キロになるのかなど把握しておくと便利です。また、長尺物であれば、正しく枕木を配置して、一か所に集中して荷重が作用しているという状態は避けるようにしましょう。

検討② 足場全体に作用する鉛直力に対する検討

足場の鉛直荷重は、1スパン当たりの強度検討と別に足場全体の強度検討を実施する必要があります。

その検討方法は、足場の高さ全体の重量+作用する積載荷重の総重量を算定して、ジャッキベースの許容耐力と比較するというものが一般的です。

たまに、建枠の許容耐力と比較している事例も見られますが、建枠よりジャッキベースのほうが許容耐力が小さいです。また、ロングジャッキなどを採用する場合にはさらに注意が必要です。

それでは、実際に枠組足場を事例として、鉛直力の強度計算をしてみましょう。

足場1スパンに作用する部材自重の算定

まず、足場部材自重を算定し、足場の段数分の足場1スパン当たりの荷重を算定します。

枠組足場(幅900mm)の場合、以下のようなものが足場1スパン当たりの部材構成および重量となります。

1スパン当たりの足場重量
  • 建枠:15.1kg × 1枚
  • 連結ピン:0.62kg × 2個
  • ブレース:4.1kg × 2本
  • 下ざん:2.1kg × 1本
  • 鋼製巾木:4.6kg × 1枚
  • 布板(アンチ):16.6kg × 1枚
  • 半布板(ハーフアンチ):8.3kg × 1枚
  • メッシュシート:0.55kg/㎡ × 1.725m(高さ) × 1.829m(スパン)

これで合計が、57.88kg程度となります。
この重量は足場の1層1スパン当たりですので、足場段数(ここでは25段と設定)を掛けると、1,447kgとなります。

しかしこれだけでは足場の重量としては不十分です。

足場最上段を建枠を設ける場合、布板は載せませんので、最上段分の布板分は引いておきます。

 ➡1,447 -16.6 -8.3 = 1,422kg

また、足場には、水平つなぎ。頭つなぎ、層間ネット、クランプといった多くの部材が取り付きます。これらをまとめて、一般的には足場重量の3%程度として見込みます。

 ➡1,422 × 1.03 = 1,465kg

これが、足場の自重になります。

足場1スパンに作用する積載荷重の算定

前に説明したように914幅の場合は、最大積載荷重は370kgとなります。また、これは1スパン当たりですので、今回のように25段の足場になると同時に載荷する可能性があります。

足場の計算においては、一般的に2層分の積載荷重を見込むことが多いです。

建物は、下から上に工事が進んでいきますので、同じスパンの中で、おおよそ2段分の荷重を見ておけば、それ以上の荷重は、通常の作業においては作用しない場合が多いです。

したがって、積載荷重は、工事の内容や現場管理によって採用する重量は実際には変わってきます。

最大積載荷重×2層では不足するような重量物を扱う可能性がある場合は、計算の時点で積載荷重を多く見ておきましょう。

または、足場高さが高かったり、ブラケット足場などで足場重量を制限したい場合は、1層分のみの荷重を見込むなどする必要があります。なお、足場積載重量を1スパンとした場合は、その代わりに現場管理を徹底しなければならないことは言うまでもありません。

それでは、足場重量の計算例として、積載荷重2層分を計算してみましょう。

370kg × 2層 = 740kg

ジャッキベースに作用する荷重と許容耐力の比較

ここまでで、足場1スパン当たりの荷重が算定できました。

自重:1,465kg + 積載荷重:740kgとなります。

足場1スパンにつきジャッキベースは2本設けられることになりますので、ジャッキベース1本に作用する荷重は、

➡ ( 1,465 + 740 ) ÷ 2 = 1,103kg

となりました。ジャッキベースの許容耐力ですが、ジャッキベースの張り出し長さによって違いはありますが、張り出し長さ250mm以下であれば、2,075kgとなります。

➡ 1,103 ÷ 2,075 = 0.53 < 1.0

となり、作用荷重より許容耐力のほうが小さくなるので、この足場は鉛直力に対して安全であることが確認できました。

まとめ

それでは、最後に本日の内容をまとめていきます。

  • 足場の鉛直力算定は基本構成の場合は以下の二点を確認する。
  1. 足場1スパン当たりの積載荷重
  2. 足場全体の作用鉛直力
  • 足場の最大積載荷重はメーカー基準と安衛則によって決まっている
  • 足場全体の検討は、足場部材の自重と積載荷重の総和とジャッキベースの許容耐力を比較検討する。

足場の鉛直力の検討は、風荷重に対する足場の検討と異なり、単純な足し算と作用荷重と許容荷重を比較するだけで非常に簡単です。

ただ、検討においては多くの仮定条件があります。現場管理において、重要な管理ポイントは、1スパン当たりの積載荷重と足場全体(同一スパン)での積載荷重になります。

現場ごとの足場計画と実際の足場の使われ方が、マッチしているか必ず確認しましょう。

また、最後に比較したときに算定した検定率(作用荷重÷許容荷重)はどの程度余裕があるかの基準になります。今回の場合であれば、0.53つまり53%となり、ジャッキベースのポテンシャルとしてはまだ余裕があることがわかります。
どのくらい余裕があるか分かれば、仮に重量物が3段分置かれていても、「まぁ、まだ安全かな」と即座に判断することができます。

なお、今回は鉛直力に対する検討でしたが、風圧力に対する検討は、別記事であげていますので、ご覧ください。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  •  梁枠両サイド建地の曲げの検討はどのように計算すればよいでしょうか?

    • 梁枠側の建地も基本的に圧縮に対する検討となります。
      元々も建地直上の1スパン全段分の荷重に梁枠上部1層分の梁枠スパンの1/2の荷重を付加します。仮設工業会が発行している文献などを見ると、梁枠部より上の荷重はブレース等で分散されるので、梁枠上1層分となっています(文献にブレース等で~と明言されてたかは未確認です)。

      コメント返信だけの文章で伝わるかわかりませんが、ご参考になれば。

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