部材のモデル化とは?

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建物全体の構造計算、部材一つ一つの計算、仮設物の構造計算、どの部位であっても現在の建築力学で構造計算するためにはモデル化が必要です。

構造計算のスタートはモデル化することからと言われますが、モデル化とは、単に部材を線状に表すことでしょうか。

なぜモデル化が必要か、モデル化のやり方、実際の部材とモデル化部材の違いついて説明していきます。

目次

モデル化の必要性

構造計算をする建物や部材の架構をラーメン構造や単純梁構造、片持ち梁構造などの部材を線、支点を固定端・ピン・ローラーなどに置き変えることをモデル化と言います。

実際の建物や部材の架構形状や支点形状のままで、構造計算することは、支点となる箇所のボルト1本や鉄筋1本にまでマクロに検証が必要となります。

また、構造計算は梁から柱に荷重が伝わるとして検討していきますが、本当にすべての荷重が確実に柱に伝達されているのか、実際の力の流れを完全に把握することは難しいです。

そこで、モデル化をして部材をシンプルにしたり、力の流れを仮定したりして、構造力学の範囲で扱える形状にしています。

モデル化のやり方

モデル化すると、実際の部材を部材架構と支点形式だけのシンプルな形状とすることになります。

今回は説明を簡単にするためにも、仮設部材の構造計算をするときによく利用される単管パイプとクランプ固定という部材をモデル化してみます。

モデル化する方法は部材(単管パイプ)を線状にあらわすことと支点(クランプ)を固定・ピン・ローラーなどの支点形状にあらわすことです。

単管パイプのモデル化自体は非常に簡単で、部材の中心線で線状にすればよいです。

柱・梁で構成するラーメン架構においても柱の中心線・梁の中心線でモデル化することが一般的です。

次に、クランプ支点のモデル化ですが、ピン支点として設定しました。
クランプには、曲げ耐力が規定されていません。したがって、支点部に曲げモーメントが作用しないように固定端ではなく、ピンまたはローラーとして設定します。

こういったように、実際の部材の形状は力の流れを考えて部材は中心線で線状に支点は部材の架構を考慮して支点形式にモデル化していきます。

実際の部材とモデル部材の違い

では、クランプを固定端として設定することは可能なのでしょうか。

また、実際の建物の支点を、多く用いられる固定・ピン・ローラーの3つに絞ってもよいのでしょうか。

クランプ止めは、ピン支持と理解してもらえばよいのですが、実際の部材に作用する荷重と比べるとどうなるでしょうか。

ピン支持ということは曲げモーメント図(M図)を書くと以下のようになります。

つまり、支点であるクランプには曲げモーメントが作用していません。

先ほど、クランプは曲げの規定がないと記載しましたが、仮に曲げモーメントが作用するようなモデル化をすると、曲げ応力度をクランプに規定しなければ構造計算ができません。

従って、クランプであれば固定端を選択することは難しいです。

どうしても、クランプ部を固定端として評価したい場合は、曲げを防止するために火打ちを設けるなど、トラス形状を構築する必要があります。

ただし、
本当の力の流れを考えると、少しは曲げの力が働いているかもしれません。規定はされていないだけで、クランプにも曲げ耐力がないわけではないからです。

こういうことを考えていくと、クランプの締め付けるネジ部はどうかななど検討がどんどんマクロになっていき、構造計算がいつまでたっても終わりません。

また、単純梁の形状にしておけば、検討上大きな間違いはない(安全側で検討できている)ということが言えます。 部材に作用する曲げモーメントは両端固定の梁に比べて大きくなります。

曲げモーメントを求める公式からもわかるように、単純梁の場合は、最大曲げモーメントは、\(M=\frac{wL^2}{8}\) になるのに対し、
固定端であれば、\(M=\frac{wL^2}{12}\) となるためです。

部材自体は、曲げモーメントに対し、十分な曲げ耐力、剛性を要している部材を選定することになるので、安全側の検討であるとも言えます。

今回は、あくまで事例を単管パイプとクランプにしましたが、実際には検討する部位に応じて、部材をマクロに検討していく必要もあります。

例えば、型枠の一部の計算では、釘止め部を支点としたり、仕上げ部材の検討でも溶接止めの箇所を支点としたりします。

まとめ

モデル化と力学の話から、実際の建物(構造架構)の力の流れと力学での力の流れは少し異なるという点について話をしてきました。

多少誤解を招くかもしれませんが、構造力学自体が、簡素化して、安全側で検討している学問だと理解してもらえばよいかと思います。

※安全側といっても無駄に安全を増しているわけではないので、部材の許容応力度を超えてもいいやという考えにはならないので注意してください。

なお、最後いよく用いられる支点のモデル化早見表を掲載して置きます。 モデル化は、構造計算や計画する人の考えにもよりますので、必ずしもこの限りではありませんが、参考にしてみてください

接合端部支点形状
鉄筋コンクリート大梁固定端
鉄筋コンクリート小梁ピン支持(連続支点)
鉄骨造大梁(フランジ、ウェブとも高力ボルトまたは溶接)固定端
鉄骨造大梁(仮ボルト)ピン支持
鉄骨造小梁(ウェブのみ高力ボルト)ピン支持(連続支点)
直交・自在クランプピン支持(すべり耐力内)
単管パイプでの井桁組み(根太、大引き)ピン支持(単純梁での検討または連続梁で検討)
パイプサポート圧縮のみ負担

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