建設工事において、代表的な建材の一つである鉄筋(異形鉄筋)。
異形鉄筋はJIS規格において強度や組成などから様々な名称に分かれています。
そんな中から今回はSD295Aについて紹介していきます。
また、最近JIS規格が改正され、SD295Aという言葉は徐々に存在を消していっております。JIS改正に伴うSD295Aの取り扱にも触れていきます。
SD295Aについて、それぞれのアルファベットや数字が示す意味を理解していきましょう。
SD295Aとは
SD295Aとは、異形棒鋼(異形鉄筋、節つき鉄筋)のJIS規格の種類の一つです。
鉄筋コンクリート造などで用いる異形鉄筋は、建築基準法でJIS規格品を用いる必要があります。
また、設計図書において異形鉄筋の呼び径とそれぞれの鋼種が記載されていますので、それぞれの規格の違いを知っておくことが重要になります。
異形鉄筋を製造しているメーカーはいくつかあるのですが、JIS規格により、強度や化学組成の上限値・下限値を定めることで、各社が製造している異形鉄筋がメーカーの違いによらず、一定以上の性能を有していることになります。
SD295Aのうち、SDとは「Steel Defotmed bar」、の頭文字になります。
直訳すると「変形された鋼棒」鋼棒となり、節つきの棒鋼(異形鉄筋)であることがわかります。
SD295Aのうち、295とは、下位降伏点のJIS規格値「295N/㎟」を示しています。
鋼材には、弾性域と塑性域の境となる強度である降伏点と鋼材自体の最大引張強度である引張り強さが主な強度のパラメータとしてよく用いられています。
異形鉄筋の場合は、下位降伏点を示していることを覚えておきましょう。
SD295Aのうち、AはSD29規格の種別を示しています。
実は、下位降伏点295N/㎟のJISは2つ存在していました。したっがって、一方をSD295Aとして、もう一方をSD295Bと規定しています。
「2つ存在していました。」と過去形で記載していますが、それには理由があります。
実は、異形棒鋼のJIS規格は2020年4月に改正があり、下位降伏点295N/㎟の強度を有する規格は1種類となりました。この後さらに詳しく解説していきます。
JIS改正に伴うSD295AとSD295について
皆さんはSD295AとSD295どちらの方が聞きなじみあるでしょうか。
私はまだSD295Aの方が聞きなじみがあります。
ここでは、今回の主題とは少しそれますが、JIS改正に伴うSD295AとSD295の関係について解説していきます。
先ほども述べましたが、2020年4月に異形鉄筋のJIS規格である「JIS G 3112:2010(鉄筋コンクリート用棒鋼)」が改正され、「JIS G 3112:2020」となりました。
これまでのJIS規格では、下位降伏点295N/㎟のものは、SD295AとSD295Bの2種類ありました。
ただ、SD295Bは使用されことがなく、製造もほぼされていない状態でした。
そこで、今回の改定において、SD295Bの規格が廃止され、1種類になったことからSD295AもSD295と名称を変更しました。
実際には、SD295AからSD295の変更は、名称の変更だけでなく、化学組成規定も変更があります。
JIS規格の変更については別記事でエントリーしていきますので、詳しく知りたい方はそちらもご覧ください。
また、規格名の変更により、世の中にSD295とSD295Aの鉄筋が存在することになっています。
JIS規格は製造に関する規定なので、製造されてからメーカー在庫として保管使用しているものはまだ工事現場で使用することができるためです。
ただ、建築基準法において、JIS規格品を用いることがうたわれてますので、この2つの取り扱いには少し注意が必要です。
SD295とSD295Aの違いと現場での対応は別記事でエントリーしてますので、以下よりご覧ください。
SD295Aの性能
さて、話をSD295Aに戻して、ここからはSD295Aの性能(強度など)についてみていきましょう。
JIS規格としては、改正されましたが、設計図書の指定材料ではSD295Aがまだ建材として使われる可能性は十分にあります。
SD295Aについてもしっかりと理解しておくようにしましょう。
まずは、丸鋼を含む鉄筋の許容応力度の一覧を見てみましょう。
こちらはJIS規格ではなく、日本建築学会が発行している『鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説』(通称、RC規準)など各文献にて規定されているRC造の構造計算に用いる許容応力度になります。
鉄筋自体はJIS規格であることから、メーカーごとに若干の強度さはあっても一定の品質以上となるように製造されていますので、構造計算に用いる強度も鋼種によって同様のものを使用します。
なお、許容応力度の規定自体自体も文献によって値が多少異なったり、規定がなかったりしますので、どの文献が参考文献として採用されているかなどは設計図書で必ず確認しておくようにしてください。
先ほどSD295Aの295は下位降伏点を表していると説明しましたが、構造計算においては短期許容応力度と長期供許容応力度の2つに強度が分けられます。
SD295Aが示す下位降伏点295N/㎟は、短期許容応力度として用いられます。
長期許容応力度は、その2/3の値となりますので、材料強度、降伏点強度、許容応力度この違いもしっかりと理解しておくようにしましょう。
SD295AのJIS規格
SD295AのJIS規格を紹介してきます。
なお、SD295Aは先ほども述べたように、最新のJIS規格ではその名称はありません。改正前の2010年での規定となりますので、ご注意ください。
SD295については別記事でエントリーしてますので、違うことをしっかりと理解しておきましょう。
JIS規格は製造方法や試験の方法、製品寸法など様々な規定があるのですが、今回は鉄筋の強度など諸性能に関する機械的性質と鉄筋を構成する化学組成についての規定を確認していきます。
機械的性質
SD295Aの機械的性質は以下のようになります。
異形棒鋼は降伏点に下限が規定されており、引張り強さは一定の範囲内となるように規定されています。
これは、大地震などで、降伏点を超えるような外力が作用した場合の靭性などを担保するためです。
下位降伏点を超えてすぐに鉄筋が伸びることなくすぐに切れてしまうような場合、一気に建物が倒壊してしまいます。
そこで、変形性能を有することで、エネルギーを吸収しています。
SD295Aは細径の鉄筋の鋼種として一般的に用いられますので、柱の主筋など構造耐力上主要な部分に用いられるととは多くありません。
しかし、柱の帯筋などにももいられる鋼種であるため、鉄筋には降伏点の規定外にも、引張り強さの規定とその差も重要になるのです。
化学組成
JISでは化学組成、つまり、鉄を構成する炭素や不純物となる物質の配合比率の一部が規定されています。
もちろんSD295Aは化学組成も規定があります。先ほど述べたような強度や靭性は鉄筋を構成する化学組成によって大きく変わってきます。
この表も改正前の2010年版であることがご理解お願いします。
SD295とSD295Aは先ほど紹介した降伏点・引張り強さなどの規定に違いはありませんが、化学組成の規定には違いがあります。
特に、化学組成については、SD295Aには規定されていないが、SD295では規定されているものがあります。
つまり、設計図書などにSD295を使用することが指定されている場合に、SD295Aの鉄筋を使ってしまうと規定として定められている物質の割合がわからないため、別物として扱われてしまうことになります。
冒頭でも説明しましが、改正にもとなうSD295への変更は名称だけと気を取られず、その違いや現場での対応をしっかりと確認するようにお願いします。
実際の鉄筋でのSD295Aの見分け方
施工管理一年生の最初の仕事といえば、配筋写真がその代表例として、挙げられます。
現場に搬入される異形鉄筋には、SD295AやSD345など様々な鋼種がありますが、実際の鉄筋を見ることで判別ができるようになっています。
鉄筋にはおよそ1mくらいの間隔で圧延マークと呼ばれる識別が設けられています。
ここでは、SD295と記載していますが、SD295Aも同様に圧延マークの突起なしまたは色識別表示なしが判断となります。
メーカーが製造した鉄筋は、鉄筋端部に色識別表示があるでしょうが、その後、鉄筋加工工場で必要な長さや折り曲げといった加工がなされて現場に搬入されます。
したがって、多くの場合、判断材料はこの圧延マークとなります。
また、搬入されてすぐの鉄筋には、鉄筋識別や折り曲げの加工形状など示したプレートタグ、またはプラタグも取り付けられていると思います。
搬入後の材料検収の場合はプレートタグでも確認するようにしましょう。
SD295Aは突起なしが判断となります。
突起なし(マーク無し)ではわからないじゃないかと思うかもしれませんが、圧延マークには突起以外にも、製造メーカーのマークと異形鉄筋の呼び径を示す数字がセットで表示されています。
まずは、製造メーカーや呼び径の圧延を探し、その横に突起があるかどうかを確認しましょう。
SD295Aを用いる部位
異形鉄筋は、設計図書の構造特記に呼び径ごとに採用する鋼種が記載されています。
設計図書に記載されている部位または鉄筋径に応じて採用箇所は異なるのですが、基本的に、SD295AはD10~D16の比較的細径と呼ばれる鉄筋に採用されています。
具体的な部位でいうと、スラブ・壁の配筋や柱の帯筋(フープ)、梁のあばら筋(スターラップ)などに採用されてます。
異形鉄筋の規格の中では一番下位降伏点が低い鋼種になりますので、構造体に限らず様々な部位に用いられるのはこのSD295AやSD295の鋼材となります。
おわりに
SD295Aについて解説しました。
本題の中でも記載しており、繰り返しになりますが、SD295Aは2020年4月のJIS規格の改正に伴い、規格としてはなくなりました。
ただ、JISは製造に関する規格であることから、設計図書の中での記載やメーカー、鉄筋工の在庫品としてまだ現場で出回ること可能性もあります。
まずはJIS規格が改正されていることをしっかりと理解して、設計図書にはSD295とSD295Aどちらで記載されているか、また現場に納入される鉄筋はどちらしっかりと把握しておくようにしましょう。
コメント
コメント一覧 (2件)
参考になりましたが質問の溶接して使ってよいものかご回答下さい
SETO EKIKO様
コメントに気づけず、回答遅くなりました。
あくまで一般的な参考意見として、述べさせていただきます。溶接に関しては、適切な溶接・管理ができるのであれば不可として文献は確認したことがないと認識しています。SD295Aの場合においても、フレア溶接の場合は、片面10d以上の溶接長さといった規定があります。
また、工場組み立てする際には、交差部を結束線ではなくスポット溶接で行うこともあります。
いずれにせよ、認定工法や適切な溶接管理、工事監理者の承認などがあれば溶接は可能です。ただ、現場での安易な点付け溶接などは断面欠損にもつながりますので、避けるべきです。