建築工事において、1階床の断熱材として、スタイロフォームがよく利用されます。
また、1階床が埋め戻しとする場合は、レベルコンを打設することが一般的です(ここでは、レベルコンで表現統一します)。
みなさんは、スタイロフォームとレベルコンどちらを上で施工しているでしょうか。
一般的な施工方法とそれぞれの工法での施工管理上のポイントを説明していきます。
一般的にはスタイロフォームが上
まず、結論から言うと、スタイロフォームが上、レベルコンクリート下で施工する方法が一般的です。
ピット埋め戻しまたは土間床の場合は、下から、埋戻し土(または改良土)、砕石敷き、レベルコン、防湿シート、スタイロフォーム、配筋・床コンクリートと構成されています。
なぜ、スタイロフォーム上、レベルコン下の方がよいのか。
また、スタイロフォーム下、レベルコン上としたい場面はどのようなときか。その際の管理ポイントはという点で、解説していきます。
スタイロフォームの役割
まず、スタイロフォームとレベルコンそれぞれの役割を確認していきましょう。
それぞれがどういった働きをしているのか理解しないと、スタイロフォームを上にすべきか、下にすべきか判断ができません。
では、さっそくスタイロフォームの役割から確認していきます。
スタイロフォームの役割は、断熱性能の確保です。
土やピット内の温度と空調のON・OFFを繰り返す室内の温度ではその温度差により、底冷えや場合によっては結露が発生の可能性があります。
そこで、断熱性能に優れ、施工もよいなスタイロフォームを設けられます。
なお、スタイロフォームは商品名で、JIS規格としては、発泡プラスチック断熱材の中の「押出法ポリスチレンフォーム断熱材」に該当します。
したがって、一般呼称としては、押出発泡ポリスチレンフォームなどと表現されています。
また、建築現場でよく用いられる断熱材としてはほかに発泡ウレタン吹付もよく用いられます。
ただ、1階床でピット形式だとしても狭く通行が困難なピット内を発泡ウレタンのホースを延ばすことは容易ではありません。
発泡ウレタンを採用している建物・現場もありますが、スタイロフォームのほうが1階床の断熱としては一般的に用いられます。
レベルコンの役割
次に、レベルコンの役割です。
レベルコンにはいくつか役割があります。代表的なものは以下があげられます。
- 1階床厚確保のためのレベル精度調整
- 床配筋作業の容易さ
- 墨出しおよび止め・段差型枠等の容易さ
- 作業環境の改善
レベルコンは設計図にもうたわれていますが、あくまで仮設です。
土間構造であっても埋戻し土(必要に応じて改良土)で荷重を支持し、不陸の調整および荷重分散の役割として、砕石が用いられています。
ただ、実際の施工においては、埋戻し土・砕石だけでは不陸がおおきいので、不陸の解消および構造となる床コンクリートの厚みをしっかりと確保するためにもレベルコンを打設します。
また、レベルコンを打設することで、1階床に伴う配筋、型枠、設備配管といった施工がしやすくなります。
まず、スラブ配筋においてはスペーサーなどの配置が容易です。スペーサーによりスラブ下部のかぶり厚さ確保ができますので品質確保の面からもレベルコンは欲しいところです。
また、スラブ段差の型枠の固定や墨出しをする際にもレベルコンがあれば容易になります。
レベルコンがなくとも浮かし型枠としたり、墨だしもスプレーを活用したり施工可能ですが、レベルコンがあることでコンクリートに釘や金物を取り付けたり、墨ツボを用いることができたりします。
さらに、レベルコンは作業環境の改善にも効果があります。
天候に左右されやす建設現場においてレベルコンを打設することで泥を引っ張らなくなり、現場がきれいにたもつことができます。
スタイロフォームを上とする理由を探る
一般的には、スタイロフォームが上とすることは、先ほど述べました。
スタイロフォーム、レベルコンそれぞれの役割を理解した上で、なぜ、スタイロフォームを上とする方が一般的なのか、性能に違いが出るのかなどの理由を探ってみます。
スタイロフォームの役割は断熱性能の確保です。
また、レベルコンはあくまで仮設扱いなので、構造計算や断熱計算では考慮されません。
したがって、スタイロフォームとレベルコンのどちらが上かということで、断熱性能に違いはありません。
しかし、スタイロフォームの断熱性能は、スタイロフォームが割れたりして、土・ピット(空気)の温度が断熱材を介さずに床に伝わってしまう状態となっては性能が低下してしまいます。
レベルコンがない状態とは、つまり掘削した土の上にスタイロフォーム敷くことになりますので、不陸を抑えるのが非常に困難です。
スラブ配筋やコンクリート打設によって、スタイロフォームには施工中から荷重が作用します。
スタイロフォームの下部が不陸によって隙間が生じていると、その部分のスタイロフォームの上を踏み抜いてしまうと圧縮力だけでなく曲げが作用してしまいます。
スタイロフォーム下部に不陸があるところのスタイロフォームの載ってしまっては割れてしまうということはスタイロフォームを見たことがあればだれでも理解できるでしょう。
スタイロフォームはJIS規格により、主性能である断熱性能だけでなく、圧縮強度、曲げ強度も規定されています。
求められる断熱性能と施工条件から必要な圧縮・曲げ強度など現場管理においてはしっかりと選定しましょう。スタイロフォームのJIS規格については別記事でエントリーしてますので興味がありましたらご覧ください。
レベルコン上としたい場合
レベルコンは構造計算上や断熱計算上の厚みとして考慮しないと説明しましたので、性能上は、スタイロフォーム下、レベルコンを上としても問題はありません。
スタイロフォームの割れを防止する対策を取り、適正な断熱性能を確保すれば、スタイロフォームを下、レベルコンクリートを上とすることは可能です。
また、断熱性能としては、断熱材をより外部側(外断熱)とした方が内部結露の発生などを考えると有利になりますので、スタイロフォーム下の方がいいのではないかという解釈もできなくはありません。
スタイロフォーム下でも適正に施工できれば、可能ということがわかりました。
では、現場管理においてレベルコンを上にしたい場合はどうのような時でしょう。
1階床あと工事として、レベルコン上を作業スペースとしたい
レベルコンを上としたいと考える理由はもっぱら、「レベルコン上を作業ヤードとしたい」に尽きるのではないでしょうか。
敷地が狭い工事現場での施工計画においては、建物の一部をあと施工として、作業ヤードを確保する工事計画を立てることがあります。
ただ、あと施工とすると、あと施工とした範囲はどうしても工事がひっ迫してしまいます。
作業ヤードを確保するためにもあと施工は避けられない。でも、あと施工とする工事はは少しでも少なくしておきたい。
このように、施工計画を立てる上では、品質・コスト・工期など様々な要素を考慮して、その最適解となるバランスを探っていきます。
あと工事工区を作ると計画した場合、施工計画で様々なことを検討します。
- 基礎工事までは完了させておきたい。
- 重量物が載るので、荷重負担や1階床のひび割れを防止するためにも1階床は後打ちとしたい
こういったことを考慮すると、基礎工事~スタイロフォーム敷までは工事を進めておき、その後の床コンクリート打設からはあと施工として残すということを考えます。
スタイロフォーム敷までを施工し、長期間そのままの状態では、重量物を載せるだけでなく、人が歩くだけでも徐々にスタイロフォームの表面がボロボロになってしまいます。
そこでスタイロフォームの上からレベルコンを打設することで、作業環境を整備しようと考えます。
レベルコン上の場合の施工上の留意点
スタイロフォームを下にして、レベルコンを上としたい場合、先ほどから述べている通り、スタイロフォームの割れを防止することがまず不可欠です。
スタイロフォーム下部の転圧・不陸調整を適正に行いましょう。
建物全体ではなく部分的にスタイロフォームを下とする場合などは、土工にも範囲をしっかり伝え、転圧・不陸調整の管理を徹底しましょう。
埋戻し土の転圧も施工管理方法が決まっていますが、不陸に関しては後からレベルコンを打設するということで、多少荒いことが多いです。
レベルコンクリート下であれば、不陸が多少荒いままでも構いませんが、スタイロフォーム下となるとそういうわけにいきません。
現場監督の管理すべきポイントでもありますので、土工の職長などとしっかりと打ち合わせをしておきましょう。
また、スタイロフォーム敷の施工記録も工事写真として残しておきましょう。
一般とは異なるやり方ですので、工事監理者も違和感を持つと思います。
スタイロフォーム下として施工することについて工事監理者に事前に合意取っておくことは当たり前ですが、工事監理者が立ち会う配筋検査の時にスタイロフォームが敷いてあるか目視確認もできませんので、工事記録は確実に残しておきましょう。
さらに、あと施工とする場合はスタイロフォーム、レベルコンクリートの上に乗せる重量物についても確認しておきましょう。
下部の地盤の転圧、不陸調整をしていれば、レベルコンクリートが割れない限り、スタイロフォームが圧縮で負けるということは考えにくいですが、必要に応じて、レベルコンクリートの厚みを通常の50mmより厚くしておくなど施工計画、管理を徹底しておきましょう。
最後に
スタイロフォームとレベルコンどちらが上?について解説しました。
私も現場管理する上で、一部あと施工と施工計画を組立て、1階床を打つ前に内部足場を組みたいという状況が出てきました。
その際に、ここで述べているようにスタイロフォームを下として、レベルコンクリートまで打設し、足場解体した後は配筋してすぐにコンクリート打設という工事計画を立てました。
スタイロフォーム下でも、性能上に問題はないことは確認できましたが、当時、この記事での述べたようなスタイロフォームの割れを防止する施工管理検討と工事記録を残すことを、工事監理者打ち合わせし合意を得ました。
一般的でないやり方をしようとすると、性能として問題ないのか、過去事例はあるかなど調べ、工事監理者などに説明する必要があります。
なぜそのやり方にするのか強い意志をもって、自信をもって説明できるように準備しておく必要があると感じました。
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