ラス網によるコンクリート打継ぎの留意点

当ページのリンクには広告が含まれています。

RC造においてコンクリートの打継ぎは必ず発生する箇所です。そして、その処理に頭を悩ますポイントでもあります。

打継ぎ面の仕切りにラス網、メタルラス、リブラス、エキスパンドメタルといった網目状の金属パネルを採用することをに対する留意点をまとめました。

広く採用されるコン止めの種類の一つですが、いくつか留意点があります。

目次

ラス網とは

ここで言うラス網とは、コンクリートの打継ぎ面の仕切りとして用いる網目状の金属パネルになります。

名称としては、ラス・ラス網・メタルラス・リブラス・エキスパンドメタルなどと呼ばれ、メーカーや製品によって別の用途で使われることも多いです。

一般にラスというと、ラス型枠として、地中梁などの地中に埋まり見た目に配慮する必要がない箇所のせき板として利用されていました。

コンクリートの打継ぎ面と仕切り

ここからは、コンクリートの打継ぎ面として求めらる性能について確認していきます。

建築工事において、標準仕様書として多く用いられる「公共建築工事標準仕様書」には以下のように打継ぎ面に対しての処置が記載されています。

6.6.3 打継ぎ

(a) 打継ぎは、梁及びスラブの場合は、そのスパンの中央又は端から1/4の付近に設け、柱及び壁の場合は、スラブ、壁梁又は基礎の上端に設ける。
(b) 打継ぎ面には、仕切板等を用い、モルタル、セメントペースト等が漏出しないように仕切る。また、打継ぎ面が外部に接する箇所には、定規(小角の類)を取り付け、引き通しよく打ち切り、目地を設ける。
   なお、目地の寸法は、特記による。
(c) 打継ぎ面には、水がたまらないようにする。
(d) 打継ぎ面は、レイタンス及びぜい弱なコンクリートを取り除き、健全なコンクリートを露出させる。

出典:公共建築工事標準仕様書(建築工事編) 平成31年版

コンクリートの打継ぎは後打ちのコンクリートと一体するような処置が求められます。

コンクリートを一体化させるためには、まず、レイタンス等は除去する必要があります。

レイタンスが残っていると薄皮一枚コンクリートにくっついているようなものですのでものですので、後打ちコンクリートとの剥離が生じてしまう可能性があります。

次に留意する点は、コンクリート打継ぎ面を粗面とすることです。

RC造の場合引張は鉄筋で負担しますが、鉄筋に荷重を伝達する役割、せん断力、圧縮力を受ける役割はコンクリート部も担っています。

コンクリート打継ぎ面が平滑の場合、特にせん断力の支持として能力が低下する可能性があります。

表面をザラザラにして先打ちのコンクリートと後打ちのコンクリートがお互いにかみ合っている状況を作ることが必要です。

ラス網をコンクリート打継ぎとして用いる留意点

これまで説明してきたように、コンクリートの打ち継ぎ面は粗面が望ましいです。

ラス網を使うことで、網目に粗骨材がひっかかり、コンクリートの仕切りとして用いることが可能です。

さらに網目状で表面的には凹凸がある状態のラス網はコンクリート打継ぎ面が自然と粗面仕上がりとなります。

一方、ラス網を用いた場合、いくつか留意しておくべき事項があります。

①コンクリート中に打ち込まれる

まず、ラス網はその他のコンクリート打継ぎ仕切り材(せき板、スポコン、エアフェンスなど)とな異なり、コンクリート打設後は撤去することが困難でコンクリート中に打ち込まれるということがあげられます。

ラス網自体は網目状の隙間からこぼれるモルタルに覆われることになり、コンクリート表面に現れません。

コンクリートの仕切りであるため、工事上必要な建設資材であることは変わりありませんが、不純物の混入を極端に嫌う設計者などからは採用しないようにとされる場合もあります。

コンクリート打継ぎの手法については、施工計画書などにおいて設計者と事前合意しておくようにしましょう。

なお、ラス網自体は、亜鉛メッキ鋼板とった鉄製の製品が多いので、構造体強度に影響を与えるような不純物ではないと考えることはできます。

結束線や鉄筋保持架台(キソエース)、シース管、スペーサーといったコンクリートに打ち込まれる必要資材として認識できることになります。

ただ、設計者の考えによる場合もありますので、留意が必要です。

②鉄筋との結束を強固に行う

ラス網は、打ち継ぎ面の鉄筋に結束線などを用いて固定することになります。

型枠自体はコンクリートの側圧による強度計算を実施しているかと思いますが、結束線の強度計算を行うことはほぼ不可能です。

細かく結束して、コンクリート側圧によってラス網が外れるということがないように留意しましょう。

また、打設時も一気に打ち上げるのではなく、段階的に打ち上げるなどコンクリート打設管理をしましょう。

③かぶり部には設けない

ラス網は鉄であることから、メッキされているとは言え、サビが発生します。
RC造はかぶり厚さが必要です。
かぶり厚さに役割の一つにコンクリートの中性化進行を鉄筋面まで進行する時間を稼ぐというものがあります。

したがって、ラス網をかぶり部に設けてしまっては、いくらかぶり厚さを設けてもラス網が錆発生からコンクリート剥離といった起因となってしまう可能性があります。
これは結束線にも言えることであります。

ラス網を用いた仕切りとしても、鉄筋に囲まれた中心部のコンクリート部のみに設置して、かぶり厚さの箇所にはラス網を設けないようにしましょう。

かぶり部は、桟木・エアフェンスなどを併用することが必要になります。

したがって、先打ちのコンクリート打設後に撤去ができるような仕切り材料または後打ちコンクリート部の側型枠を一部開けておくなど対応を取るようにしましょう。

④コンクリートを確実に充填する

最後にコンクリートを確実に密に充填することが必要になります。

コンクリート打設における一般的な留意点ですので、「そんなことはわかっているよ。」と思われるかもしれませんが、ラス網部は特に充填確認が必要になります。

ラス網は網目状に粗骨材がひっかりコンクリートの流出を抑制しています。しかし、隙間が空いてはいるのでモルタル分はモルタル分は網目から流出します。

そこで、コンクリートがラス面に到達し、ある程度の流出を確認します。

ただし、コンクリートがラス網に到達した時点で打設を止めるのではなく、モルタル分がもれラス網表面が覆われたことを確認するまでコンクリートを打設する必要があります。

ラスを覆うまで打設するには、バイブレータを十分にかけることになります。

②の留意点である結束線の固定が甘いとバイブレータの振動で結束線が切れてしまう可能性もあります。バイブレータをしっかりかけること。そのためにも結束線を強固に固定することセットで対応を取るようにしましょう。

また、隙間が生じた状態では、後打ちのコンクリート打設においてもその隙間を埋めることは難しくなります。

先打ちのコンクリートを打設する時点で確実なコンクリート充填を実施してください。

まとめ

ラス網によるコンクリート打継ぎ面の仕切りについて解説しました。

この記事を作成するきっかけとなったのも、担当する作業所において、コンクリート打継ぎとして用いたラス網を撤去するように設計者から指示があったためです。

まずは、打継ぎ面の処理、仕切り方法については、型枠施工計画書またはコンクリート施工計画書によって記載し、事前に合意しておくことの重要性を改めて感じました。

ラス網による仕切りは広く用いられている工法であるので、打継ぎとして問題はないとは考えておりますが、確実なコンクリート充填とかぶり厚さの確保という点が、現場監督としては管理ポイントになります。

管理ポイントを把握して、後戻りのない現場管理をしていきましょう!!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

日本語が含まれない場合は表示できません(スパム対策)

目次