RC造、SRC造に重要な管理ポイントの一つである、かぶり厚さがあります。
かぶり厚さの基準として、多く用いられる公共建築工事標準仕様書(以下、標仕)に対して、正確にかぶり厚さの規定を読み取ることができているでしょうか。
標仕には、一覧表の形で部位ごとの最小かぶり厚さの規定が示されてますが、その他にも文章での定義や注釈が記載されています。
標仕をしっかり読み込んで適正なかぶり厚さを管理していきましょう。
公共建築工事標準仕様書のかぶり厚さの規定
まずは、標仕のかぶり厚さの規定を見ていきましょう。
出典:公共建築工事標準仕様書 平成31年版(建築工事編)
【注意点1】採用する値はあくまで特記
まず注意すべきは、本文の1行目にある「鉄筋および溶接金網の最小かぶり厚さは、特記による。」という文章です。
かぶり厚さはあくまで、設計図書の中の特記に記載されます。まずは標仕ではなく、設計図書の特記を確認しましょう。
特記にかぶり厚さの規定が記載されていたら、その数値をかぶり厚さとします。
ただし、多くの特記には「かぶり厚さは適用図書による」や「かぶり厚さは標仕による」などの文言で記載されています。そこで初めて適用図書が標仕であれば、標仕のかぶり厚さの規定を確認することになります。
まずは、設計図書の優先順位を再認識しましょう。
【注意点2】主筋からのかぶり厚さ
次に、注意すべき点です。
それは、本文後半にある「柱及び梁の主筋にD29以上を使用する場合は、主筋からのかぶり厚さを形の1.5倍以上確保するように最小かぶり厚さを定める。」という項目です。
かぶり厚さは最外鉄筋からの距離となりますので、柱であれば帯筋、梁であればあばら筋が一般的にはかぶりの管理対象になります。
しかし、ここでは主筋からのかぶり厚さと記載されています。したがって、一般的な帯筋などからのかぶり厚さと主筋からのかぶり厚さどちらが大きくなるかは部位ごとに確認しないといけません。
本文中に書いてあるようにD29以上の場合は、かぶり厚さが主筋からのかぶり厚さで決まる場合があります。
しかし、主筋からのかぶり厚さと言っても現場で管理することは困難になると思います。主筋からのかぶり厚さを帯筋等のかぶり厚さに置き換えて適正な管理をしていきましょう。
例えば、柱(主筋D29、帯筋D13)の屋内、仕上げ無しの場合、表から読み取る最小かぶり厚さは30mmとなります。
一方、柱主筋からのかぶり厚さは、1.5Dですので43.5mm必要になります。かぶり厚さを比較するために、帯筋の呼び径13mmを引くと、主筋からのかぶり厚さは帯筋からのかぶり厚さに置き換えると、30.5mmとなり、管理としては31mm以上となります。
D29ですと際どい違いではありますが、主筋が大きい場合は必ず確認するようにしましょう。
【注意点3】仕上げありとは?
次に、一覧表および注意書きに記載がある、「仕上げあり」、「仕上げなし」についてです。
注釈にも、「「仕上げあり」とは、モルタル塗り等の仕上げのあるものとし、鉄筋の耐久性上有効でない仕上げ(仕上塗材、塗装等)のものは除く。」とあります。
かぶり厚さは、コンクリートの中性化が進行することによる鉄筋の酸化や火災時の保護といった役割があります。
仕上があれば部位的に10mm最小かぶり厚さを小さくできる記載がありますが、それはコンクリート10mm相当とみることができる仕上げである必要があります。
標仕では、モルタル仕上げ耐久性有効な仕上げとして記載されています。
ちなみに、JASS5では、仕上塗材などの中性化抑制効果をこれまでの実験などから示している文言もあります。仕上げ材の該当が不明な場合は、適用図書の確認と設計者との協議は必ず行っていきましょう。
【注意点4】屋内・屋外は注意
屋内、屋外の部位については、設計図書を確認するようにしましょう。
設計図書によっては、基礎のピット部は屋外に該当すると図示があったりします。また、ピロティなどにも注意が必要です。
構造図だけ見ていては、最後の仕様がイメージにしにくいこともあります。
屋内と思っていたら、バルコニー形状で屋外であったなど、単純なミスでかぶり不足にならないように注意しましょう。
【注意点5】設計かぶり厚さと加工後の鉄筋寸法に注意
最後の注意事項です。
設計かぶり厚さに注意してください。設計かぶり厚さとは、一般的には、最小かぶり厚さに施工・加工誤差などを考慮したかぶり厚さになります。
設計かぶり厚さですので、構造設計もこのかぶり厚さで基本的には構造計算されています。
鉄筋工の中には、加工後のかぶり不足を懸念して、加工寸法を少し小さくして加工する会社も一部あります。
しかし、かぶり厚さは過大になりすぎると、構造耐力が低下する可能性があります。また、その設計余裕度によっては、強度NGとなってしまう可能性もあります。
加工での寸法だけでなく、X,Y方向の交差部でどちらかの主筋がどうしても下がってしまうこともかぶり厚さえ過大を招くことにもなります。設計図書には必ずどちらがX、Y方向かが記載されています。また、どちらの方向の鉄筋を上として配筋する旨を記載している場合もあります。
加工寸法で過剰な絞りにならないこと交差部の鉄筋の上側、下側は必ず確認しましょう。
かぶり厚さ過大による影響は別記事でもエントリーしています。ぜひご覧ください。
まとめ
標仕のかぶり厚さ表だけで判断していることはなかったでしょうか。
現場管理で重要な管理ポイントになるかぶり厚さ必ず設計図書を確認しましょう。また、現場管理においては、部位・かぶり厚さごとにスペーサーの色分けをしたり、視覚的にも明快な種類管理を心がけましょう。
コメント