躯体工事の工程管理で必ず判断を求められるのが「型枠をいつ外すか」です。
早く脱型すれば次工程に進めますが、早すぎればコンクリートの初期ひび割れや部材のたわみにつながります。一方で遅らせ過ぎれば工程が詰まり、転用計画にも影響します。
基本的には、工程を進めたいので、現場ではなるべく早く型枠を解体して次工程に進めたいと思うことが多いでしょう。
今回は、せき板と支保工の存置期間について、建築基準法施行令第76条・昭和46年建設省告示第110号・JASS5を根拠に整理していきます。
現場で「圧縮強度で判断すべきか、材齢で判断すべきか」と迷った時の判断軸を揃えることが目的です。
せき板と支保工は基準が違うことを押さえる
まず前提として、「せき板(側型枠)」と「支保工」は取り外し基準が異なります。ここを混同すると判断を誤ります。
- せき板:コンクリートに直接接する型枠板。側圧と自重を受け持つ
- 支保工:スラブ・梁底などの型枠を下から支える支柱。コンクリートの自重+施工荷重を受け持つ
せき板は側圧に耐えられる強度が出ていれば外せますが、支保工はコンクリート自体が自立できるだけの強度を持たないと外せません。このため、せき板のほうが先に外せるというのが基本の考え方になります。
建築基準法施行令・告示による存置期間の規定
法令の根拠は建築基準法施行令第76条で、その具体的な基準は昭和46年建設省告示第110号に規定されています。
せき板の取り外し基準
告示では、せき板はコンクリートの圧縮強度が5N/mm²以上に達していれば取り外せるとされています(普通コンクリート・基礎、梁側、柱、壁などの鉛直部材)。
材齢日数による規定もあり、平均気温に応じた日数が示されていますが、実務では圧縮強度で判断することが多いです。
支保工の取り外し基準
支保工は、圧縮強度が12N/mm²以上(軽量骨材コンクリートは9N/mm²以上)に達し、かつ施工中の荷重および自重によって有害な変形・応力を生じないことを構造計算で確認したうえで取り外すと規定されています。
「強度が出ていれば即外してよい」ではなく、構造計算による安全確認がセットである点に注意してください。スパンの大きいスラブや片持ち梁では、特にこの確認が重要になります。
JASS5による存置期間の規定
日本建築学会のJASS5(鉄筋コンクリート工事標準仕様書・2022年版)では、施行令より踏み込んだ基準が示されています。ポイントは計画供用期間の考え方です。
計画供用期間はその建物自体がどの程度の期間使用されることを想定して設計されているかといった区分になり、以下の4段階に区分されます。
- 短期:おおよそ30年
- 標準:おおよそ65年
- 長期:おおよそ100年
- 超長期:おおよそ200年
せき板(基礎・梁側・柱・壁)について、JASS5では計画供用期間が短期および標準の場合は圧縮強度5N/mm²以上、長期および超長期の場合は10N/mm²以上を目安としています。長寿命を求める建物ほど、初期の急激な乾燥や衝撃から守るために早期脱型をしないという考え方です。
支保工については、施行令と同様に圧縮強度12N/mm²以上を基本とし、スラブ下・梁下では設計基準強度の85%以上または12N/mm²以上のいずれか大きい値など、部位ごとの条件が整理されています。ここは現場の設計基準強度によって必要強度が変わるため、都度確認が必要です。
現場での管理ポイント
型枠脱型・支保工解体の基準がわかったところで、現場での管理ポイントを見ていきましょう。
側型枠の脱型管理
側型枠は、現場での管理目安として、圧縮強度5N/mm²を一つの指標としていきます。
コンクリート打設時に圧縮強度確認用の供試体を採取しますが、その際に型枠脱型用の供試体を取るように指示しておきましょう。また、一回の試験は3本の供試体の平均値となるので、本数も適切に指示しましょう。
ここで注意が必要ですが、型枠取り外し時期の決定のための供試体は標準養生ではありません。
工事現場に置ける水中養生または封かん養生として標準仕様書に記載されています。
出典:公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版
しっかりと現場の環境に近い状態で供試体を管理しておく必要があります。
特に冬場は強度の発現が遅くなります。材齢3日でバラす前提の工程重視で型枠の脱型時期を決めてしまうと十分なコンクリート強度が発現していない可能性があります。
こういった状態で無理やり型枠を解体してしまおうとするとフォームタイの取り外し時にセパが共回りしてしまい、コンクリートに貫通した水みちが生じてしまうという不具合につながることもあります。
型枠支保工の解体管理
型枠支保工についても上述したような圧縮強度12N/mm²を管理ポイントとして対応することが多いです。ただし、『施工中の荷重及び外力について、構造計算により安全であることが確認されるまで』という注釈がある通り、構造計算上の確認が必要になります。
躯体工事中であれば、支保工を2層受けとする計画が多いです。
2階梁・床を支える1階支保工は、3階梁・床を打設するときの荷重までは残置するのが基本になります。4階梁・床の躯体が着手した時に設計基準強度を満たしていれば支保工を解体し始めることが多くなるでしょう。
上階躯体に支保工があるということは、支保工を伝達して、コンクリート打設荷重が下階の梁にまで作用します。梁は本来はスラブ荷重や自重といったものが作用する設計になっていますが、上階の梁荷重が作用するということです。しっかりと上部構造の荷重まで考慮した計算をしましょう。
もちろん作用する荷重によっては3層受けにしたり、一部は残置して間引く支柱撤去までしかできないということもあります。
支保工を早期に撤去して、弱材齢の時期にたわみやクリープが発生してしまうとあとからその荷重っを抜くことは難しいです。
発現材齢の考慮と上階の施工荷重を考慮して、適切な施工計画、構造計算、工程計画を行いましょう。
養生温度と存置期間の関係
存置期間を考えるうえで忘れてはいけないのが養生温度です。
- 寒中コンクリート:JASS5では日平均気温が4℃以下になる期間に適用。保温養生・給熱養生で一定温度を確保しないと、所定強度まで通常以上の日数を要します
- 暑中コンクリート:日平均気温が25℃を超える期間。強度発現は早いものの、乾燥収縮ひび割れのリスクが増えるため、散水養生・湿潤養生を怠らないことが重要です
「気温が高いから早く外せる」と安易に判断せず、初期材齢の湿潤養生はむしろ延ばすという意識を持ちましょう。強度は出ていても、表面がひび割れやすい状態で脱型すれば品質に直結します。
おわりに
型枠の存置期間は、「材齢◯日で外す」とルール化して運用したくなるところですが、本来は圧縮強度と部材への荷重条件で判断するものです。建築基準法施行令・告示が定める最低ラインに、JASS5の計画供用期間に応じた上乗せ、さらに現場ごとの養生条件を重ねて考える必要があります。
「監督が材齢だけで指示を出している」「供試体試験結果を待たずに脱型している」という現場は、いまも少なくありません。根拠のある存置期間を設定できるかどうかは、品質事故を防ぐうえで施工管理者の腕の見せ所です。自分の現場の基準がどの文献・どの条文に沿っているか、一度整理してみてください。




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