コンクリートとひび割れは切り離せない永遠の課題です。コンクリートだけでなく硬化すると縮むという性質がある限りひび割れ自体をなくすことは困難です。今回はコンクリートひび割れ対策の基本を説明します。
コンクリートのひび割れ
コンクリートのひび割れ対策としては、大きく分けて2つになると考えています。
- ひび割れの発生を抑制させる
- ひび割れを積極的に誘発させる
以上の2つです。
あとは、それぞれを満たすために様々な対策をコストと睨めっこしながら実施していきます。
ひび割れ抑制の対策
ひとつめのひび割れを抑制についてです。
抑制の方法としては、さらに2つに分けられます。
- ひび割れ発生そのものを抑制する。
- ひび割れを分散させ、ひび割れ幅を微小にしていく。
①ひび割れ発生抑制
コンクリート材料により、ひび割れ自体を抑制する対策になります。
- 低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント等の発熱の小さいセメントを用いる。
- 石灰石骨材等のコンクリートの乾燥収縮を低減できる骨材を用いる。
- 膨張材・収縮低減剤などのひび割れ対策として有効な混和材(剤)を用いる。
①、②の対策はコンクリート硬化時の発熱が小さくなることで、コンクリート内部は高温でコンクリート表面は常温というという温度差によるひび割れ発生の抑制に努めます。
③は、混和材(剤)による対策で、膨張材はその名の通り、コンクリート初期硬化段階で一度膨張させます。
収縮低減剤は硬化時の収縮を低減するものになります。
これらを組み合わせ、コンクリートのひび割れを抑制していきます。
②ひび割れ分散によるひび割れ幅抑制
次にひび割れを分散させることで一つ一つのひび割れ幅を抑制する方法です。
- .鉄筋を密配筋としたり繊維補強材を用い、ひび割れを分散させる
他の対策と経路が異なります。
コンクリートのひび割れは硬化時に鉄筋がある部分は拘束され、鉄筋がない箇所は自由に収縮できるという応力差から生じることも原因の一つです。
鉄筋量が増えるとその応力差が小さくなっていくので、ひび割れ幅を抑制することができます。
ただ、一点認識していただきたいのは、コンクリートのひび割れの総量は変わらないということです。
分散させ、一つ一つのひび割れ幅を小さくすることで、構造体に影響を与える有害なひび割れを発生させないことが目的となります。
ひび割れ誘発の対策
これまではひび割れ自体の抑制(ひび割れ幅の分散)に重きを置きました。
一方で、もう一つの対策法として、ひび割れを発生させるという方法もあります。
ひび割れ抑制なのにひび割れを積極的に発生させることは矛盾しているようですが、理にかなった方法です。
以下が一般的な、ひび割れを積極的に発生させる(誘発させる)方法です。
- コンクリートを一部断面欠損させ、あえて弱点を作る事で、コンクリートのひび割れを決まった位置に誘発させる(ひび割れ誘発目地)。
- コンクリートをひび割れ抑制できる面積で完全に分断し、コンクリートの温度変化による伸縮に対応する伸縮目地を設ける。
①の対策は外壁で多くみられる対策です。
外壁や腰壁のような面積的に長方形の部材は、コンクリートの硬化時に正方形に近づこうとします。
縦横比のバランスを考慮し、コンクリートに断面欠損を設けることで、ひび割れの発生を特定させます。
また、ひび割れ誘発目地には、シーリング等で防水の措置を取っておきます。
②の対策は、屋上の押えコンクリート等でよく見られます。
コンクリートは硬化した後も温度変化で登縮を繰り返します。
温度差とコンクリートの長さによって、伸縮量は計算できるので、その伸縮に対応できる伸縮目地を設けます。
屋上における伸縮目地の対策はひび割れ防止の観点もありますが、パラペットがコンクリートによって押し出されるのを防ぐという効果が主です。
おわりに
施工管理をしていくと永遠のテーマであるコンクリートとひび割れ。
様々あるひび割れ対策ですが、どういった効果があるのかを理解せずに対策を行うと、互いの対策が互いの足を引っ張るということにもなりかねませんなりかねません。
一緒に良いコンクリート作ってきましょう。
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