足場の計画はもちろん強度計算もあるのですが、足場割付け計画をするのも大事な施工計画の一つです。
ここでは、足場計画図作成の際の基本的な手順を紹介していきます。
足場計画図は足場仮設材のリース会社に作図を依頼することもありますが、小規模な場合は自分で作図することになります。また、リース会社が作図したといっても現場監督はチェック業務が必須です。基本の足場計画手法は必ず理解しておきましょう。
ここでは、架空の建物を想定して足場計画図を実際に作成してきたいと思います。
サンプル建物
以下のような、建物を想定して、足場計画図を作成していきます。
シンプルな建物形状にしてますが、セットバックがあったり、張出し部があったりと実際の建物近いイメージとしました。
構造:RC造
階数:地上3階建て
高さ:地上14.7m(GL=1FL-200、1階階高4500mm、2階階高4500mm、3階階高4500mm)
外形:セットバックあり、一部張出しあり
1.建物の外形と足場クリアランス
足場計画図を作成するときは、まずは、建物の外形を把握しましょう。
建物はセットバックなど階によってアウトラインが変わることがあります。各階のアウトラインの重ね合わせをまずは作成しましょう。
その後は、基本となる足場と建物の離れ300mmの補助線を作成しましょう。
ここでは、1・2階の外郭を緑色、3階の外郭を水色で表現しています。各階のアウトラインを重ねることで、出隅・入隅の角がわかりやすくなります。
2.各コーナーに役物配置
それでは早速、足場を配置していきます。
まず、建物のコーナーに足場幅=スパン幅の足場(以下、役物スパン)を仮配置しましょう。
建物の出隅でなく、入隅部にも忘れずに配置しましょう。
この際、起点となるコーナーは、施工全体の計画から一番はじめに足場を組み始める箇所がベターです。後の解説で出てきますが、足場スパン長さが決まっている以上、基本のクリアランス300mmは必ずしも守ることができません。
最初に組む箇所を300mmとルールを決めておくと、現場で実際に組む際も鳶さんに位置出しの指示をしやすいので、おすすめです。
コーナー部は役物スパンを設けておかないと通行のためにブレースがつけられないので、単管パイプで手すりを設けるなどの手間が発生してしまします。そこでコーナー部はすっきりした納まりを心がけましょう。
3.基本は1829(1800)mmで配置
足場のスパン長はメーターサイズとインチサイズがあります。また、建築現場ではメーターサイズをみやこ式、インチサイズをビテイ式と呼んだりもします。
名前の由来などは私もしっかりとは把握してませんが、メーターとインチは地域性もあるようですので、足場計画の際は、その地域で扱っているサイズで計画しましょう。
ここでは、私もこれまでなじみがあるビテイ式で作図します。ビテイ式の足場スパンは、610mm、914mm、1219mm、1524mm、1829mmが一般的なサイズです。
この中から好きなサイズを選べばよいのですが、基本は1829mmで作図していきましょう。
それぞれのスパン長さに対応した布板やブレースなどがありますがまずは一番スパンが確保できるもので作図して、部材をなるべく少なくすることが必要です。
ここでは、図左下から上に向かって1829mmを配置していきました。
途中にある幅の広い足場は階段部を想定しています。この後説明があるので、まずは1829mmが並べられる箇所まで配置していきましょう。
4.階段の位置を想定しよう
ここでは、先に各面の階段位置を想定しておくことをおすすめします。
階段の配置も足場計画を進めていく中で調整していく必要があるのですが、先に階段を配置しておかないと後々大変になります。
先に建物全体の階段位置を決めておきましょう。階段配置の基本的な考え方は以下の通りとなります。
- 各面に1か所以上設ける。
- 階段の間隔は最大でも40m以下とする。
- ロングスパンエレベーなどが配置される場合は、その両側に設ける。
- 階段部は踊り場を考慮し、4スパンとする。
- 階段は1219幅枠か一般の足場のさらに外に別配置する。
階段の距離が遠すぎると、人はどうしても近道行動がしたくなります。足場をよじ登ったりなどが無いよう階段は適正に配置行きましょう。
階段部は、一般的に用いる914mm幅の場合、足場の階段は、布板と同じ幅を取られますので、作業幅(布板幅)が240mmの半布板(ハーフアンチ)1枚となってしまします。作業幅として不足していますし、人のすれ違いも困難になります。
そこで、階段部は1219幅の建枠を用いるのが一般的です。また別の方法として、914mm幅のさらに外側に階段用のスパンを設ける場合もあります。
今回は各面に1か所、南面のみ2か所の配置と想定しました。
各面に何か所配置を想定するか検討しておけば、この段階は配置は大体の位置でOKです。
5.調整用のスパン・最小足場間隔
次のコーナー部まで1829mmスパンの足場を配置したら、次のコーナーに設けた役物スパンとの間に1829mmのスパンが入らなくなってしまします。
そこで、610~1524mmスパンの材料を使用して、スパン割を調整しましょう。
また、その際、単純に最後の1スパンを短い長さの材料を入れるのではなく、一つ前の1829mmから入れ替えて、1524+1524mmで3048mmとするなど、複数組み合わせて次のコーナー部の役物スパンまでの間隔をなるべく短くするようにしましょう。
コーナーの数によってどうしても足場割りがきれいにいかない箇所もありますが、基本的には役物スパンまでの間隔は305mm以下にはできるはずです。
実際に足場割り付けを調整するとこのようになりました。今回はたまたま、1829mmがギリギリ入った形です。
6.コーナー部は足場に注意
さて、コーナーまでたどり着いたので、次の面の足場をこれまでと同様の手順で作成していきましょう。
と、言いたいところですが、コーナー部はいくつか注意点がありますので、説明していきます。
足場と建物のクリアランス
先ほど、足場割付けを調整した際に、役物スパンの位置を修正して、建物と足場のクリアランスを少し小さくしました。
建物と足場のクリアランスは小さいほうが落下のリスクを低減できるのよいのですが、あまりに建物と足場が近すぎると型枠工事や仕上げ工事といった作業がしにくくなります。
しかし、逆に300mm以上のクリアランスを設けてしまうと安衛法で落下防止の措置をとることが義務付けられています。
足場のクリアランスの最小は足場を使用する工事(型枠、ALC取付け、外装仕上げ)などによって異なりますので、一概には言えませんが、250mm~300mmの間で調整するのが一般的です。
役物スパンが単独自立はNG
コーナー部はスパン調整することでこれまで作図してきた足場と連結されていない可能性もあります。
役物スパンはこれまで配置してきた足場と連結されていない場合は、次の面の足場とは必ず連結されるように割り付けるなど、単独配置とならない配置が望ましいです。
実際の足場では、単管パイプでつないだりするので、完全な独立となることはないのですが、壁つなぎが取り付く足場と強固に接続されていないので、弱点となる可能性があります。
そこで、次の面の足場は必ず役物スパンと接続できるように配置していきましょう。
役物スパンの向きを確認
足場には幅方向(妻)と長手方向(桁)があります。
枠組足場の場合、長手方向にしか足場はブレースを延ばせないので、向きを90度回す必要があります。イメージしながら建枠がどこについているのかを足場組立をイメージしながら作図していきましょう。
調整スパンがなくても必ず生じる隙間
枠を90度回転させると、これまで作図してきた足場と役物スパンの建枠同士がぶつかってしまします。
調整間隔があり、コーナーステップを設けられているのであればそのままでもよいのですが、調整間隔を設けずに足場がきれいに収まっている場合でも、建枠同士が干渉する箇所は70mm程度の隙間が必ず必要になります。
この70mmとは、建枠同士をクランプで緊結すことによって生じる距離です。クランプは単管パイプを固定すると単管パイプの中心までの距離が80mm程度になるようです。建枠は単管パイプより径が細いので、70mm程度で作図しておけば問題はないかと思います。
また、4章で説明した階段配置を先に想定していたほうが良いことも同様の理由となります。階段は一般的に1219幅枠を用いることが多いので、914幅枠とブレースが通りません。1219幅枠で階段を計画している場合は、建枠同士を抱かせる必要がありますので、注意していください。
7.各面はクリアランスを調整しながら
それでは、各面も作図していきましょう。作図していくと、全体として以下のような足場割りが出来上がりました。
足場の割り付けをしていくと先ほども説明した建物と足場のクリアランスの調整に苦慮します。
あっちを立てればこっちが立たず、、、、すべてが完ぺきな足場割り付けは難しいので、全体的に建物と足場のクリアランスがよくなりように各面の調整スパンを修正していきましょう。
今回も作成後に全体を見直すと、通りがとっていない箇所が一部ありました。このまま計画を進めていって、足場組立中も修正に気づくことができなければ、単管パイプで無理矢理つないだり思いがけぬ隙間
足場割り付けの調整ができたら、一度コーナーステップや鋼製足場板を配置してみましょう。
250mm程度の隙間であれば、コーナーステップで埋めることも可能ですし、セットバック部のようにあえて大きな隙間を開けた個所は鋼製足場板を設けましょう。また、その際は2断手摺も単管パイプなどで配置が必要なことも忘れずに!
8.一度立面図を起こす
ここまで、できたら一度立面図に仮配置してみましょう。
立面図を作成していくと、平面状では気付かなかった足場おさまりの不具合も見えてきます。
一度立面図を起こしてみて、このまま足場計画進めていいか確認してみましょう。そして、不具合があればまた、平面図に戻って、足場の計画を見直していきましょう。
それでは立面図の作図説明です。
と、言いたいところですが、少し長くなりましたので、ここでいったん休憩とします。
足場立面図の作図、そして、また平面図の修正は次の記事で説明してきます。このまま継続して足場計画を終わらせるという方は次の記事でお会いしましょう。
まとめ
ここまで、足場計画図(平面図)の基本を説明してきました。
私も初めて足場計画図を作図しろと所長に言われたときは、安衛法のチェックやクリアランス・足場同士のクランプ止めなど非常に苦労しました。
足場計画はコーナー部の配置やスパン調整の仕方など描き手によって計画が異なってきます。高い足場はよく目立ち、建築現場の顔とも言えます。すっきりときれいな足場計画を目指いしていきましょう。
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