足場には垂直養生材として、ネットやメッシュシートなどが取り付けられます。
ここでは、そもそものネットの役割、養生材の種類、そしてそれぞれの養生材の特徴などを説明していきます。
工事にあった適正な養生材の選定とその管理方法について知識の手助けになれば幸いです。
垂直養生材の役割
足場の垂直養生材は、物の落下、人の墜落、騒音低減、目隠し・飛散防止などさまざまな役割があります。
ただ、養生材の種類によっては、人の墜落防止に対する性能は満たしていないなど、種類によって役割が変わってきます。
まず、外部足場は、一般的に高さが2mを超えることになりますので、「労働安全衛生法および同規則」において、設けるべき設備が定義されています。
第519条 開口部等の墜落防止措置
事業者は、高さが二メートル以上の作業床の端、開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、囲い、手すり、覆い等を設けなければならない。(出典:労働安全衛生規則)
この条文を基に、墜落防止として、有効かどうかをそれぞれの養生材について確認していく必要があります。
物の落下、人の墜落防止としての役割
垂直養生材の役割の一つに物の落下、人の墜落防止があります。
外部足場の場合は、墜落防止として有効に採用する材は、「交差筋交い」、「巾木」、「または同等の性能を有するもの」となります。
垂直養生材も採用する種類によりますが、墜落防止として有効とみることが可能です。したがって、垂直養生材は墜落防止としての役割を担っています。
ただし、ネットは墜落防止として有効ではありませんので、留意が必要です。詳細は後述します。
騒音低減としての役割
垂直養生材の中に、防音パネルなどがあることから、垂直養生材は防音としても機能します。
ただし、足場の隙間は必ず生じますので、完全な防音ではありません。工事の内容と近隣状況を考慮して、養生材は選定していく必要があります。
また、防音と言っても、防音パネルと防音シートでは、その性能は全く異なります。
適正な養生材の選定に心がけましょう。
飛散防止としての役割
養生材には、飛散防止の役割もあります。
工事現場では足場上で作業するので、物の落下は避けられません。そこで工事によって飛散防止対策として養生材の選定が重要になります。
また、物だけでなく、工事に用いる材料の飛散にも留意が必要です。
例えば、コンクリート打設中に、養生材にコンクリートが飛散してしまった場合でも、グリーンネットであればそのまま下に落下しますが、メッシュシート以上ですと骨材の落下はある程度制御することができます。
また、外壁の仕上げ塗装においても、スプレーガンで吹付ける工法は思いのほか、その塗材が飛散します。
養生材① グリーンネットの留意事項
グリーンネットは15mm目程度のネットタイプの養生材です。グリーンが多いので、グリーンネットと記載されることが多いですが、色はグレー、ブルー、グリーンが一般的なところです。
メリットしては、ネットとしての空隙が大きいので、風の影響を受けにくいことです。
養生材の隙間の率を表すものとして、充実率と呼ばれるものがありますが、ネット類はおよそ0.26(26%)と他の養生材と比べて非常に値が小さいです。
足場は垂直養生材の種類によって作用する風圧力が異なってきますので、壁つなぎの間隔を広げたりできます。
デメリットとしては、まず第一に充実率が小さいことになります。
メリットと相反しますが、隙間が大きいということはその分、落下・墜落防止としては、あまり有効に作用しません。
第二に、ネットとしての強度が低いことが挙げられます。
墜落防止として、有効な養生材とするには、ネット自体の強度が必要です。
しかし、グリーンネットは十分な強度を有していません。したがって、グリーンネットを採用する場合は、必ず「交差筋交い」+「巾木」とセットになります。
また、グリーンネットと別にラッセルネットと呼ばれる墜落防止ネットもあります。
ラッセルネットは足場であれば小幅ネットとして、建物と足場の間に設けられています。ラッセルネットは墜落防止としての強度を有してます。間違っても、グリーンネット類を墜落防止材として用いることはないようにしましょう。
グリーンネットを採用する事例とまとめ
グリーンネットは、飛散防止としては、そこまで性能はありませんので、S造で外装が金属パネル仕上げである場合に用いられることが多いです。
RC造や塗装仕上げの場合は、不適となります。ただし、ロングスパンエレベータの正面など壁つなぎ間隔がどうしても広くなってしまう箇所などは限定的に使用されることもあります。
グリーンネットは、充実率が小さく壁つなぎ間隔を広くできる。墜落防止措置を有していないので、「交差筋交い+巾木」と併用する必要があります。
グリーンネット養生材なのに、「交差筋交い+下ざん」はNGです。こういった事例は、よく見られます。養生材による足場構成の違いは十分に理解しておきましょう。
養生材② メッシュシートの留意事項
メッシュシートは、その名の通り、ポリエステルをメッシュ状に編み、樹脂コーティングした養生材です。
シートの空隙は非常に小さく、充実率は0.7~0.9程度となります。
充実率が大きいことから、飛散防止にも有効で、RC造や塗装仕上げの建物では一般的に使用されます。
ただし、その反面作用する風荷重が大きくなることから、壁つなぎ間隔が狭くなります。
これまで経験的には、高さ方向を階高ごととすると横方向2スパン程度が強度上の限界となることが多いです(建物高さ、地域によっても大きく異なりますので、必ず強度計算は実施してください!)。
また、メッシュシートには強度規定もあり、仮設工業会認定品であれば、一定以上の強度を有していることから、墜落防止材としての性能を認められています。
したがって、メッシュシートであれば、「交差筋交い+下ざん」で足場の構成対応可能です。
最後の注意事項として、メッシュシートにはⅠ類とⅡ類があります。
Ⅱ類は一般に「改修用メッシュシート」と呼ばれ、通常使うメッシュシートとは分けて考える必要があります。
Ⅱ類はⅠ類に比べ、軽量で充実率も小さいのですが、墜落防止としての性能を満たしておりませんので、ネットと同じ扱いをする必要があります。しっかり違いを把握して使用するのであればよいのですが、壁つなぎ間隔を狭くしたいから、メーカーに問い合わせて、Ⅱ類を採用したということがないようにしましょう。
メッシュシートを採用する事例とまとめ
メッシュシートは、充実率が高いことから、鉄筋コンクリート造の建物や塗装仕上げの建物に多く用いられます。
充実率が大きいことで、壁つなぎの取り付け間隔は細かくなるので、強度検討の実施と計画に沿った壁つなぎの取り付け、管理を徹底しましょう。
また、小さいながらも穴あきであることから、足場の中にも採光が入ります。そして、外部からの目隠し効果も期待できます。
外部足場での作業が多いような建物ではメッシュシートの採用が多くなります。
養生材③ 防音シートの留意事項
次に、防音シートです。
防音シートも様々なシートがあるのですが、ここでは、メッシュシートタイプのものとして紹介します。
防音シートは、その名の通り防音効果をある程度期待することができます。充実率は1.0が一般に採用されます。
メッシュシートタイプですので、メッシュ目は設けられているのですが、防音性能を損なわないために、さらに小さくなっています。
ただ、メッシュ目があることで、採光を取り入れることができ、足場内もある程度の明るさ(’作業環境)を確保することができます。
工事現場では、打撃音や金属同士の接触音などさまざな騒音があり、近隣住民にとっては、不快でしかありません。
防音シートは、防音性能を有し、さらにシートとシートの隙間からの音漏れも防ぐために、シートがオーバーラップ構造となっているのが特徴です。
また、シート自体にでかでかと「防音」と記載されていることも特徴に上げられます。
振動・騒音といった人間の感覚によって、感じ方が大きく変わってくるものは、一度気になってしまえば、些細な音でも敏感になってしまいます。
騒音計で測定して、いくら基準値以下であると言っても、解決は難しいです。防音シートで振動・騒音に配慮していることのアピール、近隣住民との良好な付き合いも振動・騒音対策には非常に有効です。
防音シートを採用する事例とまとめ
防音シートは、住宅地での工事の際に用いたり、解体工事のような騒音の発生が頻繁にあると想定される工事で用いられます。
充実率は1.0となるので、メッシュシート以上に風荷重を受けることになりますので、壁つなぎの取り付け・管理を徹底する必要があります。
また、防音の対策としてはなるべく隙間をなくすことです。オーバーラップ部の適切な処置、結束ひもをしっかりと絞り、隙間をなるべく小さくしましょう。
ただし、メッシュ状である以上、防音性能としては、実はそれほど高いものではありません。その性能を十分に理解し、採用しましょう。
養生材④ 防音パネルの留意事項
最後に防音パネルを紹介します。
防音パネルは、これまで説明したネットやメッシュシート、防音シートとは全く形状が異なり、パネル状の養生材になります。
足場の支柱に引っ掛ける形で取り付けることになりますが、取り付け作業自体も非常に大変になります。
また、風荷重に対しては、充実率はもちろん1.0なのですが、壁つなぎだけでなく、防音パネル自体が飛散しないように、日常の管理・点検を十分に行う必要があります。
また、台風の時に、他のシート状の養生座であれば、外しておく・巻き上げておくという対策もとれますが、パネルなので撤去、仮置き、復旧が非常に困難になります。
防音性能としては、防音シートよりも優れており、駅前の大規模工事など防音パネルの採用が多いように感じます。
ただ、パネル状であることから、採光がほぼ取り込みできません。
養生足場として、用いるのであればよいのですが、作業足場として使用し、上部からの採光が届かなくなるような作業場所では照明設備などが別途必要になります。
防音パネルを採用する事例とまとめ
防音パネルは特に振動・騒音に気をつかう作業所で用いられます。
ただし、防音パネル自体に重量もあるので、取り付けの作業手間や風荷重に対する対策・検討が不可欠になります。
作業場所、作業規模、外部足場を使用する頻度など十分に把握しての採用が必要です。
まとめ
養生材の種類をまとめました。
一般的に用いられる養生材としては、グリーンネット、メッシュシートのどちらかではないかと思います。
しかし、工事現場によっては、別の養生材も検討する必要がありますので、どういったものがあるかは把握しておくようにしてください。
また、養生材の種類によって、性能に違いがあるのは、もちろんですが、安衛法で規定されている足場の構成も違いが生じることにも留意が必要です。
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