鉄筋には、SD295、SD345、SD390といったといった種類があります。
今回は、SD345に絞り、その種類と機械的特性や建築において用いられる用途を説明していきます。
SD345とは
SD345とは、異形棒鋼のJIS規格の種類の一つです。
鉄筋コンクリート造などで用いる異形鉄筋(異形棒鋼)はJIS規格品を用いることが必要です。
JIS規格により規格値が定まっていることで、各製造メーカーが製造している異形鉄筋はメーカーごとに強度等がバラバラというわけではなく、ある一定以上の性能を有していることになります。
SD345のうち、SDは、「Steel Deformed bar」の頭文字になります。直訳すると「変形された鋼棒」となり、異形鉄筋であることがわかります。
SD345のうち、345は、下位降伏点のJIS規格値「345N/㎟」を示しています。
性能
まずは、SD345だけでなく、異形鉄筋(SD)・丸鋼(SR)・溶接金網の許容応力の一覧を確認していきましょう。
鋼種ごとの許容応力は以下のようになっています。
構造計算に用いる、許容応力度は、各指針によって値が少し差がありますが、上表から採用します。
異形鉄筋は、製造メーカーごとにその引張強度などの性能に多少の違いはあるでしょう。ただ、JIS規格であることら降伏点の規格が決められています。
構造計算においては製造メーカーごと違いは考慮せず、規格値である降伏点を採用します。
ここでわかるように、SD345の345は短期許容応力度=降伏点を示しています。
なお、長期許容応力度は、短期許容応力度の2/3の値となります。
構造計算をする際は、もっぱら引張許容応力度を用いて計算します。
鉄筋コンクリート造は、鉄筋とコンクリートの複合構造でありますが、曲げモーメントを算定する公式として、M=at・ft・jという公式があります。ここで、ftが鉄筋の引張許容応力度を示しています。
JIS規定
SD345のJIS規定を確認していきましょう。
JIS規定ではこれまで説明した引張強度などの機械的性質のほかに、鉄筋を構成する炭素(カーボン)やケイ素、マンガンといった化学成分の割合も規定されています。
SD345の機械的性質
SD345の機械的性質は以下のように規定されています。
ここでは、2020年4月に改定されたJIS G 3112:2020の値で記載しています。JIS規定の改定により、SD345ではこれまで規定がなかった降伏比が追加されました。
SD345では、降伏点の下限値が設定されており、どの製造メーカーでも345N/㎟以上の降伏点は有していることになります。
また、降伏点は上限値も規定され、さらに降伏比(降伏点と最大引張強さの比)が追加されたことにより、鉄筋が降伏した後の塑性域の長さがある程度定められたことになりました。
SD345の化学成分
この化学成分自体は、施工管理する上では特に覚えておく必要はないかと思います。
異形鉄筋自体、鉄ですのでそれを構成するC(炭素、カーボン)Si(ケイ素)、Mn(マンガン)など元素の比率が決まっています。
鉄は各元素の割合などにより、硬さや靭性といった性能が変化していく材料ですので、こういったように元素の比率が決まっています。
その他の規定
日本工業規格(JIS)は材料の製造に関する規定ですので、上で紹介した機械的性質、化学成分以外にも製造に関する規定が定められています。
- 形状、長さ、質量およびその許容差
- 外観や分析試験、測定の方法と判断基準
- 圧延マークや色別塗装による区別などの表示方法
建設現場においては、ミルシート、プレートタグや圧延マークを記録に残すことによって、搬入された鉄筋がJIS規格品であることの証明となります。
JIS品であることが分かればJIS規定されたものはクリアできていると考えることができます。
異形鉄筋のSD345の見分け方
先ほどのその他の規定の項目で、圧延マークということが出てきましたが、異形鉄筋には、鉄筋径と製造メーカー、そして材料種別が表示されています。これを圧延マークと言います。
実際の鉄筋におよそ1mごとくらいの間隔で以下のようなマークがも圧延されています。
SD295やSD345といった材料種別を確認するには突起の数で判断します。
SD345は突起1つが判断となりますので、現場で鉄筋材が搬入されたときに、タグの確認と圧延マークの確認を行うようにしましょう。
また、色別塗装で材料種別がわかるようになっています。SD345の場合、鉄筋端部が黄色スプレーでマーキングされています。
ただ、鉄筋の加工や圧接工事のためのサンダー掛けなどで色別塗装は現場に搬入されたタイミングでは消えている可能性もあります。
工事記録としては、圧延マークを写真を撮り保管、ミルシート、プレートタグを整理して保管することでJIS品であることを証明していきます。
鉄筋が搬入されたら忘れずに圧延マークの確認と写真記録をしておきましょう。
SD345の使う場所
異形鉄筋の採用種別は設計図書の構造特記に記載されています。一般的に、SD345は鉄筋径D19以上に採用されます。
D19となると多くが構造体の主筋となる箇所にもなりますので、強度の高い材料が使用されています。
先ほども掲載しましたが、鉄筋コンクリート造において、部材の許容耐力はM=at×ft×jで求められます。異形鉄筋としては、at(有効断面積)とft(許容引張力)が耐力算定のキモとなります。
呼び径が大きくなれば、その分材料強度も上げておかないと上げておかないと、次は配筋量が多くなってしまい、非効率な構造となってしまういます。そこで、ある程度の径ごとで鋼材種も同じように変化していくことを覚えておく必要があります。
いずれにせよ、必ず設計図書を確認して、径ごとの鉄筋種別を確認するようにしましょう。
まとめ
異形鉄筋の材料種別SD345についてJISの規定を中心に説明してきました。
仮設構造計算をするうえでも鋼材種ごとに規定されている降伏点を用いることになりますので、種別を把握しておくことは重要です。
また、現場管理においても設計図通りの異形鉄筋が使用されているかは重量な管理ポイントになります。材料としてどの鉄筋が搬入されたのか、そして実際の現地でどの材料が何本で柱・梁を組立されているのか設計図を確認して、工事記録として納めておくようにしましょう。
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