建物は設計図・設計図書をもとに作られていきますが、建築基準法をはじめとする各種法令や規則、さまざまな参考図書などをもとに設計図書の作成、現場管理が行われていきます。
設計図書には、すべての管理方法を網羅するわけにもいかず、その一部は適合図書によると記載があるものがあります。
また、設計図書の中にも意匠図と構造図での矛盾や表現が違う箇所などが必ず生じます。
こういった時の設計図書の優先順位があります。
設計図書内に記載されていることもありますが、基本的な優先順位は変わりありませんので、設計図書の優先順位として覚えてしまいましょう。
また、設計図書の適用図書として記載がない、JASSや各○○工法指針・同解説といった参考図書を現場管理においてどう扱うのかといった点も踏まえて解説していきます。
設計図書における優先度
設計図書だけでは、建物を建てることは実際にはできず、より詳細な施工図の作成、施工計画書の作成といったものが必要になります。
工事に見積もりに参加したときや工事を受注した後などで、設計図書を読み解き、見積もりや施工計画の策定を行うのですが、この時に、設計図書の不備や矛盾点が生じることはあります。
設計図書の優先度は、基本的に後から作成したものが優先度が高いとされています。
- 質問回答書
- 現場説明書
- 特記仕様書
- 設計図
- 標準仕様書
質問書は、設計図書を読み解き、矛盾があった場合の確認のための質問や施工計画を定める上で、設計図書には「○○記載されているが、△△とする必要がある。よいか?」といった質問・確認を行い、設計者から回答を得たものです。
設計図書というと設計図を認識する方も多いですが、文章で質疑回答書や特記仕様書といったものも設計図書に含まれますので、よく確認しておくようにしましょう。
設計図書の優先度の詳細
先ほど、質疑回答書については、簡単に概要を説明しましたが、他の項目も含め改めて詳細解説していきます。
それぞれの優先度で提示した書類や仕様書が設計図書のどこに記載されているのか理解して行いと設計図書を読み解くこともできません。
質疑回答書・現場説明書
質疑回答書・現場説明書は、先ほど軽く説明ましたが、意匠図・構造図といった設計図書を受領してから設計者に質問したり、設計者から説明を受けてものをまとめたものです。
意匠図・構造図であれば、製本して確認しやすいようにしているかと思いますが、質問回答書等は、別途ファイリングして管理する必要があります。
また、単にメールや口頭だけでは言った・言ってないの水掛け論始まってします。
書類のやりとりはメールでも構いませんが、必ず設計者本人とやり取りを行い、電子印といったものでも構いませんので、必ずサインして書面として残しておきましょう。
質疑回答書では、設計図で読み取れないポイントや施工上設計図通りにいかない箇所、設計図書の矛盾といった点を質問しておくものになります。
特記仕様書
特記仕様書とは、意匠図・構造図のそれぞれ冒頭のページに記載されているものです。
各工事の適用材料や施工管理項目が記載されていています。
また、特記仕様書の記載方法はやや特殊で、他の建物の設計図書でも繰り返し使えるように、いくつかの項目は列記されており、黒丸の印を適用すると記載されていたりします。
特記事項の適用優先は、1.⦿ 2.※とする。
ただし、⦿と※のある場合はともに適用する。
防水工事
・アスファルト防水
⦿改質アスファルトシート防水
※塗膜防水
設計図
設計図とは、意匠図・構造図のそれぞれのページになります。
1階床伏図といった資料や、断面詳細図といった図面が該当します。
標準仕様書
標準仕様書は、特記仕様書とやや似てはいますが、扱いとしては別のものです。
標準仕様書の適用は、特記仕様書に記載されていることがあります。
多くの場合、『公共工事標準仕様書 ○○版を適用図書とする。』と一文記載されていることあります。
そのほか、設計事務所やデベロッパーによっては、社内で独自の規定をまとめたものがあり、それらを適用図書として記載していることもあります。
ここで重要になってくるのは、適用図書は、その版まで確認しておくことが重要です。
例えば、「公共建築工事標準仕様書 平成31年版」を適用図書としていた場合、あくまで平成31年版のものが適用です。
公共建築工事標準仕様書は令和4年版も発刊されていますし、3年ごとに新しい版が発刊されます。
最新版としてしまうと、規定が工事途中に変更になったなど生じる可能性もあるので、版まで指定があることに注意です。
設計者・工事監理者との対話
設計図書の優先順位についての解説の最後に、優先順位があるといっても、設計者・工事監理者との対話を大切にしていかないといけないよという話と適用図書以外の学術書の扱いについてを記載して終わりとしていきます。
設計図書も人が作るもの
まず、設計図書も一人の設計者が作っているのではなく、色々な設計者が担当して作っています。
現在では、BIMを活用して、意匠図と構造図、さらに設備設計図の納まりなどを事前確認しておき、後戻りを防ぎましょうといった設計・施工一体となった手法も用いられています。
しかし、設計図はまだまだ人間の仕事の領域です。
今後、AIなどが発達したといっても、例えば最適設計や最適構造を過去の事例から提案はしてくれるものの採集的な判断は設計者となることは変わらないでしょう。
設計図書には、優先順位が記載されてはいますが、設計図間の不備・矛盾については必ず設計者に確認しておく必要があります。
特記仕様書には、防水は○○防水、適用範囲は基礎、立ち上がり、、、などと書かれていて、断面詳細図を確認すると、防水範囲が記載されていないといったこともあります。
この時に、優先順位は特記仕様書だからとするのではなく、設計者に質疑をあげ、「特記仕様書を正としてよいか?」といった確認しましょう。
また、ここで回答をもらうことで、質疑応図書として、一番優先順位の高い設計図書となります。
設計者は、特記仕様ではわかりにくいかと考え、断面詳細図にあえて防水範囲を明示してくれていたかもしれません。
意匠図・構造図といった設計者が作らげる書類間の矛盾については、必ず対話・質疑することが望ましいです。
優先順位があるとしても、機械が仕事するわけではないので、設計者の思いを十分確認した上で施工することが信頼にもつながります。
参考図書の位置づけ
最後に、参考図書の位置づけです。
建設工事では、日々進化する工法や管理ポイントを各協会などが指針として発行しています。
代表的なものは、日本建築学会が発行するJASSなどあったりします。
また、杭工事では、杭メーカーが工法ごとに大臣認定を取得しており、設計指針・施工指針を策定しているものがあります。
こういった各協会が発行してる文献も十分根拠がある資料として施工計画に採用できます。
ただし、これらの文献は設計図書ではなく、あくまで参考文献であることを忘れてはいけません。
質疑をあげるときに、根拠資料して提示したり、施工計画の上で新たな工法と指針として適用してよいかといった確認が必ず必要になります。
私も、技術的根拠を持って、設計者に質疑をあげて、工法などを変更したりすることが多くありました。
その時も、適用した書籍とその版を明確にしておくことを心がけていました。
おわりに
設計図書の優先度について、その概要とそれぞれの資料が設計図書のどこに記載されているのかについて解説していきました。
設計図書を読み解く能力も現場監督に求められている重要な能力です。
よく、2Dの図面から3Dの建物イメージを脳裏に浮かべることができるかといった施工屋としての能力を問われることもありますが、それだけではなく、それぞの図面にどう書かれていて、どの範囲を適用するのかといった読み解く能力も重要になります。
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