建物がほぼほぼ完成して後は検査を受けるだけ。そんな状態になってこのような事態に見舞われたことはないでしょうか?
鉄筋の鋼板タグ・プレートタグが未整理で検査に間に合わない!!
整理し始めたけど、そもそもタグが足りないよ!!
今回は、現場が終了間際になって、整理に苦労する鉄筋の鋼板タグについて、何のために集めているのか、なぜ必要なのかについて解説していきます。
鋼板タグの整理と保管が必要な理由
まずは、この鋼板タグの整理と保管がなぜ必要なのでしょうか。
鋼板タグは確かに鉄筋の材質や強度、納品数量や長さなど材料管理・品質管理のためには重要なものであることに違いはありません。
ただし、これらの記載はミルシートからでも確認することが可能です。
また、鋼板タグの整理といっても地味ではありますが、実際のタグを回収してファイリングなどの整理を行うだけでも現場社員の労力は意外とかかります。
建築確認検査から必要性を知る
鋼板タグを整理する理由は、建築確認検査の第三者機関が確認項目に明記しているからということが非常に大きいです。
以下に、確認検査機関であERIの検査項目チェックシートの抜粋を表示します。
2.鉄筋コンクリート工事
日本ERI(株):中間・完了検査チェックシート(監理書類検査)より
鉄筋のミルシート タグプレートの整理とミルシートとの照合
このように、ミルシートと鋼板タグにより参照することが記載されています。
これを実現するために実質的に鋼板タグの製造番号とミルシートの製造番号をあわせて照合できるようにしておく必要があります。
標準仕様書には明言されていない
では、実際の作業所で工事を監理する設計図書や標準仕様書などにはどう記載があるのでしょうか。
標準仕様書などに記載がある場合は、工事監理者と鋼板タグの管理方法の協議ができるかもしれません。
標準仕様書は設計図書によって、異なりますがここでは、適用図書としてよく用いられる「建築工事標準仕様書」をのこととします。
鉄筋の項目を確認すると、以下のような管理方法が記載されています。
5.2.3 材料試験
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和4年版 第5章鉄筋工事 より
鉄筋の品質を試験により証明する場合の試験の方法等は、適用するJIS又は建築基準法に基づき定められた方法により、それぞれ指定された材料に相応したものとする。
つまり、具体的に鋼板タグとの確認照合や整理を示す規定は見つかりません。
東京都標準仕様書には記載がある
一方で、標準仕様書にも明確にうたわれているものもありますので、注意が必要です。
それは、東京都などの自治体が独自に定めている「東京都建築標準仕様書」等の仕様書です。また、工事監理する会社によっては同様に独自の仕様書を適用図書としている場合もあるでしょう。
もちろん標準仕様書は何を適用するかは設計図書によるので、東京で建てる場合はすべてに適用されるというものではありませんが、標準仕様書にもうたわれていることもあるという注意喚起のために一例を挙げております。
東京都標準仕様書では同様の鉄筋工事の項目に以下のような記載があります。
5.2.3 材料試験 (1)
「1.4.4 材料の検査等(2)」により JIS の規格証明書を提出する場合は、次による。ア JIS の規格品は、原則として材料試験を行わない。ただし、鉄筋のロールマーク及び タグと照合した規格証明書を監督員に提出する。
イ 鉄筋の種類、径ごとの質量が2t未満の場合は、監督員の承諾を受け、規格証明書の写しの提出に代えることができる。
東京都建築工事標準仕様書 第5章鉄筋工事 より
ここで、タグと規格証明書(ミルシート)の照合が記載がありました。
鋼板タグの管理が必要な理由と現場での管理
鋼材タグの管理・整理がなぜ必要かはこれまで記載した通りで検査においてミルシートと鋼材タグの照合確認が行われるからとなります。
ミルシートと鋼材タグを照合しようとするとミルシートに記載の鋼材番号にあわせて、この鋼材番号の鋼板タグはここにファイリングしています。と検査官に提示しるよう必要があります。
そこで、非常に大変な整理作業なのですが、やっておく必要があります。
ミルシートと鋼板タグの照合
ミルシートと鋼板タグをなぜ照合する必要があるのでしょうか。一般に材料の品質管理としてはミルシートさえあれば事足ります。
鋼板タグと照合で確認する理由としては、本当に作業所・建物でその材料が使われたことを証明する目的がほとんどであると私は考えています。
ミルシートがある鋼材だからと言って、実際に現場に納品され、建物の材料として利用したかは確実には分かりません。もしかすると鉄筋工場に保管して前の作業所の余材を使っているかもしれません。
そこで実際の鉄筋束に取りつく鋼材タグを現場納品した後に回収したものであれば、材料として使用したとみることができるでしょう。実際のところ、鋼板タグも再発行できますし、材料が納品されたからと言って本当に建物で使われているかの厳格な証明にはなりません。
ただ、ミルシートと鋼材タグが照合できるのであれば、実際に利用したとみることができるだろう。
鉄筋の組み立ては配筋検査などで現場管理もしているといった点を考慮して、総合的に品質確保を担保しているのでしょう。
建設DXの時代で手法は変わらないか(願望)
建設DXとして、自動化や検査の省力化などいろいろと変革が起きていますが、建築基準法にはうたわれているわけではないが、確認検査期間の検査項目に記載されているミルシートの照合に関しては、改善の余地があるように感じます。
二重チェックとしてミルシートと鋼板タグの照合は適切な対応かと思いますが、照合の方法をもっとデジタル化することはできないのでしょうか。
例えば、名刺管理アプリのようにスキャンして記載内容を読み取った電子上での確認、QRコード読み取りでの確認ということも可能かもしれません。第三者検査機関のチェックシートにある通り、照合できることさえできれば現物との確認である必要は必ずしもないかと思います。
ただ、一施工者である私のような身分だと 「照合はできるので、この現場はQRコードに置き換えました。」 と変えたところで、検査官がどう判断するかはわからないですし、改ざんできないような技術的根拠・手法を示す必要もあるのでしょう。
新しい手法であれば、それでよいと認めてくれる確固たる根拠がないと現場も従来の管理方法を取らざるを得ないですし、いたちごっこのような虚しさを感じます。
おわりに
鋼板タグの整理の必要性について、どこでその必要性が求められているか解説していきました。
具体的には、建築確認検査の第三者機関の検査項目にミルシートと鋼板タグの照合という文言があるため必要になってきます。
そもそも何故これが必要かというと、JIS規格の品質が担保された鉄筋が鉄筋工場に納品され、それが確かに現場に納品され、建物に使われたという証明のためです。
ただ、ミルシートといくら照合と行っても、再発行などできる以上100%の証明にはなり得ません。とはいっても品質管理の手法の一つとしては有効です。
二重チェックで品質証明を行なっていると理解して大変労力のかかる整理作業ではありますが、しっかりと対応していきましょう。
また、最後にデジタル化の時代、このやり方変えることが出来ないのかについても提言してみました。名刺のスキャンのようにやり方はいくらでもあると思います。
ただこれが実行されない要因としては、誰もそれで良いと言えないからです。本質的な必要性を十分に解決した上で省力化をこういったものから少しづつ業界が変わっていけばなと思うところです。
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