コンクリートにはさまざまな種類があります。
今回は高強度コンクリートを打設する際に、よく耳にする高流動コンクリートと高流動化コンクリートについてその違いを解説していきます。
名前は似ていますが、違いをしっかり理解しておかないと施工管理でのポイントが異なってきます。
高流動コンクリートと高流動化コンクリートの違い
高流動コンクリートも高流動化コンクリートも高強度コンクリートや密配筋の部位の打設などに用いられる流動性を高めたコンクリートです。
高流動コンクリートと高流動化コンクリートは名前的には、『化』が付くかどうかだけですが、コンクリート種別としての定義、現場管理するポイントは明らかに異なります。
まず、この二つの種類のコンクリートには、流動性を高めるために混和剤・混和材などを添加しています。
それぞれ、流動化を高めるための添加剤・材をどのタイミングで添加するかという点で名称が異なってきます。
高流動コンクリートとは
高流動コンクリートとは、流動性を高めるために混和剤・材等を配合したコンクリートとして生コン工場で製造されます。
流動性が高いコンクリートとして、JIS規格を取得したコンクリートとなります。
スランプフローは45~60cmともなり、鉄筋が密な部材や高強度のコンクリート、CFT造における充填コンなど、コンクリートの充填が困難と思われる部位に使用されることがあります。
添加剤・材の投入タイミングは、生コン工場で製品出荷時点から高流動コンクリートとして定義されたコンクリートです。
高流動化コンクリートとは
次に、高流動化コンクリートです。
高流動化コンクリートは、その名の通り、高流動に化けさせたコンクリートと読み取ることが可能です。添加材の投入タイミングは、現場に生コンが納品されてからとなります。
元となるコンクリートは、高強度・普通強度のコンクリート問わず、JIS定義されたコンクリートを使用します。
現場に納品された後、作業所(元請)の責任で、添加剤を添付して高流動化させます。
もちろん、事前に試し練りを行い、工事監理者から承認を得たり、流動化剤添加後の攪拌時間などの管理は材料メーカー等が行ったり、レクチャー会を行ったりします。
高流動化コンクリートを採用するメリット
高流動コンクリートと高流動化コンクリートの違いは分かりましたが、高流動化コンクリートを採用するメリットはどこにあるのでしょうか。
コンクリートの生コン工場での配合は、JIS規格に適用するものとして、認定を受ける必要があります。
高流動コンクリートの配合や管理が可能な生コン工場だとしても、JIS規格認定していなければ、出荷することができません。
高流動コンクリートとして、JIS規格を取得している生コン工場であれば、問題ないですが、高流動コンクリートのJIS規格を取得していない生コン工場では、すぐに規格品の認定取得を取れるわけでもありません。
そこで、あと添加できる高流動化コンクリートが採用されます。
生コン工場での、製造・出荷のタイミングはJIS認定品として、現場に到着してから、元請の責任として、添加剤を加え、流動性を付与します。
もちろん、勝手に流動化材を添付していいのではなく、事前に生コンとの相性や流動化材の添加量や攪拌時間を管理するための試し練り・試験練りを行い、工事監理者とも承諾してもらう必要があります。
高流動化コンクリート採用の際と注意
高流動化コンクリートは、JIS規格を取得していない工場の生コンにあと添加できる手軽さから、すぐに採用したくなりますが、使用の際にはいくつか注意が必要になります。
- 使用前に試し練りを行い、添加材の使用方法の確認、強度等の確認を行う。
- 試し練りは、工事監理者の承諾を受ける。必要に応じて立会い試験を行う。
- 添加材の添加量、攪拌時間など作業所で管理項目が増える。
- コンクリートの品質責任は、元請(ゼネコン)となる。
それぞれの注意点は、元請の現場監督はしっかり理解して行いと思わぬ品質不具合にもつながります。
一つ一つ、詳細を確認していきましょう。
試し練りと工事監理者の承諾
高流動化コンクリートを使う場合、試し練り(試験練り)と工事監理者の承諾が必須となります。
建築基準法にて指定建築材料として以下のような条文があります。
第37条 建築材料の品質 建築物の基礎、主要構造部その他安全上、防火上又は衛生上重要である政令で定める部分に使用する木材、鋼材、コンクリートその他の建築材料として国土交通大臣が定めるもの(以下この条において「指定建築材料」という。)は、次の各号の一に該当するものでなければならない。
一 その品質が、指定建築材料ごとに国土交通大臣の指定する日本工業規格又は日本農林規格に適合するもの
二 前号に掲げるもののほか、指定建築材料ごとに国土交通大臣が定める安全上、防火上又は衛生上必要な品質に関する技術的基準に適合するものであることについて国土交通大臣の認定を受けたもの
建築基準法より
躯体に用いられるコンクリート材料は指定建築材料に該当し、日本工業規格(JIS)に適合するもの使用しなければなりません。
高流動化する前のコンクリートはJIS認定などを取得したコンクリートですが、ここに流動化材を添加したものを使用していいかという点を考慮しなければなりません。
条文ではJIS規格品を使用しなければならないとしているのではなく、JIS規格に適合する必要があると記載されているわけです。
そこで、試し練りを行い、圧縮強度試験等を行い、工事監理者にJIS規格品と同等であること・使用してい良いことを承諾を受ける必要があります。
もちろん、流動化材の添加量や攪拌時間の管理といった点で、試し練りを行う必要もありますが、試し練りや圧縮強度試験を行うことは、JIS適合品であることの承諾を受ける目的が主となります。
添加に関する施工管理
使用前に試し練りを行い、工事監理者の承諾を受けた場合でも、打設時の流動化材の添加を管理する必要があります。
JIS規格のコンクリートとして、納品していますがその後は現場の責任で添加するので、流動化材の添加についても、現場監督の管理ポイントになります。
まず、流動化材はコンクリート1㎥あたりの添加量や添加後の攪拌時間などが定められています。
実際に使用する添加材メーカーに添加を依頼したり、メーカーから添加のための講習会を開催してもらい、受講した人が必ず添加するという管理方法が一般的です。
基本的に、生コンプラントの運転手は添加してくれません。
責任問題もありますし、添加する場合は、生コン商社の担当者や添加材メーカーの担当者、添加の受講を受けた作業員や現場監督などが添加し、攪拌の指示をすることになります。
高流動化コンクリーㇳを使用するわけですから、施工管理ポイントが増えることは必然です。
コンクリート工事担当者は、コンクリート打設当日は、受入検査・打設管理立会い・数量調整と忙しくなります。
現場全体でフォローできる体制を作っていきましょう。
添加後のコンクリートの責任の所在
先ほど、責任問題の話題もありましたが、高流動化コンクリートとすると、その責任範囲を確認しておかないと思わぬトラブルや品質不具合につながる可能性があります。
基本的には、高流動化した後のコンクリートについてはの責任はゼネコンにあると考えておけばよいと思います。
コンクリートは生ものですので、硬化時の材料分離や強度発現不足といったことが起きる可能性はゼロではありません。
これがJIS規格コンクリートであれば、生コン工場にもその責任はいくらかあります。
例えば、強度発現が遅れ、28日圧縮強度でして指定強度が発現しない場合はどうなるでしょう。
こういった場合も、判断は工事監理者に仰がれるわけです。
対策として追加で実際に打ち込んだコンクリートからコア採取して強度を確認したり、型枠の解体を遅らせさらに+○日で圧縮強度の発現を確認する。
または、打設したコンクリートをすべて解体して、再度躯体構築から工事をやり直すという判断をされるかもしれません。
どの対策になったとして、追加の費用や工事全体の工期に与える影響はとてつもなく大きなものになります。
こういった万が一の不具合が出た場合、高流動化コンクリートを使用すると、プラントや生コン工場にコンクリート品質の不具合し責任を負わせたりすることはできません。
※責任を負わせる以外の表現が見つからなかったので、上記のように記載しています。
JIS規格のコンクリートであっても強制的に責任を負わせるということではないことは注釈しておきます。
ここで、言いたいのは、コンクリートに流動化材を添加した後は、ゼネコン側の責任で流動化材を添加したという認識を持っておくことが重要ということです。
おわりに
高流動コンクリート、高流動化コンクリートはこれからの時代、大規模な建築工事では必須になってくるものと考えられます。
高耐久性の建物提供だけでなく、環境負荷を低減して流動性回復のためにも流動化材を添加するということが出てくるでしょう。
さらに高流動化コンクリートとなると、一文字付くだけでこれだけ材料として、別であることに認識、必要な現場管理ポイントなどを理解いただけばと思います。
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