かぶり厚さとは
かぶり厚さとは、「鉄筋コンクリートにおいてコンクリート表面から鉄筋までの最短距離」のことです。
かぶり厚さの正式な定義について、「建築基準法」、「公共建築工事標準仕様書」、「建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事」などの文献を確認したのですが、
「かぶり厚さを確保すること」、「最小かぶり厚さは~」といった文ばかりが出てきて正式な定義は確認できませんでした。
かぶり厚さという言葉はこの業界においては常識にように使われています。
かぶりの役割
かぶり厚さの役割は鉄筋の酸化を防ぐことです。
鉄を空気中に放置しておくと錆が発生します。
鉄筋に錆が発生すると、鉄筋の体積が錆の分だけ膨張することになるので、鉄筋が周囲のコンクリートを押しのけようとする力が発生します。
最終的にコンクリートが爆裂し鉄筋がむき出しになってしまうと鉄筋コンクリートとして機能がなくなってしまします。コンクリートの強アルカリ性によって鉄筋の酸化を防ぐことがかぶりの役割です。
※空気と錆については簡単な補足を後述します。
かぶりに厚さが必要な理由
かぶり厚さは最小かぶり厚さとして部位ごとに必要な厚さが規定されています。
コンクリートの強アルカリ性で鉄筋の酸化を防いでいるのにさらにその厚さが規定されていらのはなぜでしょう。
それは、コンクリートも経年によりその強アルカリ性がコンクリート表面より徐々に失われていくからです。
強アルカリ性のコンクリートでも空気中の二酸化炭素によってアルカリ性が失われていきます。これを中性化といいます。
中性化したコンクリートが鉄筋のところまで到達してしまうとかぶりがない時と同様に鉄筋に錆が発生してしまいます。
したがって、二酸化炭素が多く含まれる空気・土に触れる部位や、構造耐力上の重要性によりかぶりは厚さが規定されいます。
用語の補足
空気中と錆
イメージがつきやすいように空気中に放置すると錆が発生すると記載していますが、正確ではありません。
錆の発生は、酸素と水の供給により、鉄が酸化することで発生します。つまり、空気中の酸素と水または雨などが複合的にあわさることで錆が発生します。
ちなみに、酸素供給がない常時水中ある鉄は錆が進行しないようです。
鉄筋と錆
鉄筋の錆が問題と説明しておりますが、
鉄筋表面に錆がつく程度では、鉄筋自体に悪影響を与えることはありません。
むしろ錆のざらつきが鉄筋とコンクリートの付着力を高めることもあります。
ただし、酸化による鉄筋の腐食が進行するほどになると鉄筋の断面積が削られ、鉄筋の耐力は低下します。
鉄筋コンクリート
鉄筋コンクリートは圧縮に強い、火災に強い、しかし、引張には弱いコンクリートと引張には強いが棒状であるため座屈を伴うような荷重には弱い、火災に弱い、酸化する鉄筋が互い合わさることでその弱点を補っている構造です。
コンクリート爆裂し鉄筋がむき出しになると鉄筋のコンクリートによる拘束が弱くなったり、鉄筋の酸化が進行したりと様々な問題が生じます。
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