今回は、「公共建築工事標準仕様書 平成31年版」により規定改定となった普通コンクリート試験供試体の採取方法について何が変わったのかを解説していきます。
なお、平成31年版の適用はだいぶ少なくなってきていると思います。
令和4年版においても規定は変わりありません。
平成31年版以前(平成28年版)では、このような規定であり違いが生まれていることは理解しておきましょう。
コンクリートの供試体採取方法
普通コンクリートとは、標準仕様書の中では、「設計基準強度が36N/㎟以下のコンクリート」と規定されています。
※JIS規格の普通強度コンクリートとは少し定義が違いますので、コンクリート工事に携わる場合は、この違いをしっかりと理解しておくことが望ましいです。
さて、話がそれました。話をもどします。
今回の標準仕様書の改定により、この普通コンクリートの供試体採取方法に多少変更がありました。
1回の試験は、打込み日ごと、打込み工区ごと、かつ、150㎥以下にほぼ均等に分割した単位ごとに行うこと
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)平成31年版
フレッシュコンクリートの試験用か構造体コンクリートの強度判定用かで、若干規定分は異なりますが、両者とも上記のような規定分となっています。
では、これまでの規定分はどうだったのでしょうか。
平成28年版では以下のように記載しております。
レディミクストコンクリート工場およびコンクリートの種類が異なるごとに1日1回以上、かつ、150㎥ごとおよびその端数につき1回以上
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)平成28年版
150㎥という数量はそのままですが、この規定分を素直に受け取ると、端数の取り方が少し変わってくることがわかります。
次章より、その違いを詳しく見ていきましょう。
試験を行うタイミングの違い
打込み日は工区、種類といった採取方法は、文章を多少変更した程度でこれまでとあまり変わりがないと考えます。
1日の打設の数量ごとにいつ供試体を採取するかが大きな改定のポイントです。
例えば、1日に240㎥のコンクリートを打設する場合、1回の試験とはいつ行うことになるのでしょうか。
※ただ、1回の試験といっても供試体は1回につき3本採取します。
この3本の供試体の採取については、フレッシュコンクリートの試験用と構造体コンクリートの強度確認用で異なってきます。
今回は、あくまで1回の試験のタイミングに絞りお話しします。
では、まず試験の回数ですが、150㎥を超えていますので、2回となります。H31年版とH28年版それぞれの採取は以下のようになります。
- 【H31】:240㎥を均一にし、おおむね120㎥ごとに1回の試験を行う。
- 【H28】:最初の150㎥の中で、1回の試験を行い、のこり90㎥の中で1回の試験を行う。
私たちはどう管理するか
この規定変更は、より均一に試験体を採取して、品質のバラツキを抑えようとする意図もよみとれます。
また、工事管理者のメリットとしても、例えば160㎥の打設予定など、150㎥を超えてからの試験では、これまで不都合が多かったので、これらが解消されることにもなります。
コンクリート打設時の管理・打設最後の数量調整なども少しは余裕をもって「よいコンクリート」を打設することができるのではないでしょうか。
おわりに
建設工事の監理は、設計図書にまず何を参考図書にするか記載されています。
民間の工事でも標準仕様書を用いる設計図書は多いですが、必ず設計図書の確認と工事監理者との協議は事前に行うようにしましょう。
平成31版の標準仕様書で設計されている建物は少なくなってきたでしょうか。
あくまで設計図書に記載されている適用版が正となりますので、そのことも忘れずに。
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