コンクリート供試体の養生方法の違い、強度の出方の差など理解してますでしょうか。
また、コンクリート強度によっても供試体の養生方法は変わってきます。
養生方法の整理とそれぞれの養生方法の特徴を述べていきます。
コンクリート供試体について
コンクリート供試体は実際に打ち込まれたコンクリート(構造体コンクリート)の強度を推定するために使用します。
もちろんのことながら、構造体コンクリートと部材の寸法、養生の温度など環境が異なってきますので、強度の発現にも違いが生じます。
そこで、打設するコンクリート強度(呼び強度)には、設計基準強度※に構造強度補正値を加味して、調合管理強度という強度を有するコンクリートを打設します。
構造体強度補正値については、それだけで結構なテーマになりますので、別エントリーで説明していきます。
供試体養生方法の種別
養生方法は大臣認定コンクリートなど入れると様々な方法があります。ここでは代表的な3つの養生方法をまず紹介していきます。
標準養生
標準養生とは、簡潔に言うと、「日本全国均一の同じ養生環境で養生しましょう。」というものです。
JISに「コンクリートの強度試験用供試体の作り方」として規定されています。
しかし、ここでも公共建築工事標準仕様書とJASS5(建築工事標準仕様書[日本建築学会])で養生方法に違いがあります。
設計図書に記載されている適用図書を十分に確認する必要があります。
公共建築工事標準仕様書の場合:20±2℃の水中養生。
JASS5の場合:20±3℃の水中または飽和水蒸気養生。また、供試体の脱型までの間、20±3℃の気中養生。
公共建築工事標準仕様書ではJISの「コンクリート強度試験体の作り方」をもとに養生方法を規定しています。
一方、JASS5はJISの「コンクリート用語」から±3℃や飽和水蒸気養生など養生方法に違いが生じています。
また、コンクリートは打設後数日の初期の養生が強度の発現に影響を与えるという見解から、JISでは規定されていない供試体の脱型から水中に入れるまでの間の養生環境も規定しています。
現場水中養生
現場水中養生は、直射日光の中らない現場内で水中養生を行う養生方法です。
実際の現場では、敷地周辺に直射日光が当たらないよう小屋を組み、その中にポリケース等に水を入れ、供試体を養生させます。
打ち込まれている実際のコンクリートにより近い環境下の養生となるため、供試体の強度と構造体コンクリートの強度差は標準養生より小さくなります。
また、型枠の脱型用強度は、現場水中養生であることが標準仕様書に謳われています。
その代わり現場での管理が必要になることに注意が必要です。現場水中養生の管理ポイントは別記事でも掲載しています。
現場封かん養生
現場封かん養生は、コンクリート表面からの水分の出入れを防ぐようにポリフィルム等で供試体を覆った気中養生です。
現場封かん養生を直射日光が当たらない場所に保管する必要があります。
その他の養生方法
供試体の養生では、構造体温度養生というものもあります。
高強度コンクリートになると使用されることがある養生方法ですが、私も実際に見たことがありません。
これは、構造体コンクリートの内部温度を随時測定し、その温度に合わせて、水温を調整する養生方法です。
供試体と構造体コンクリートの強度差はほとんど見られず、優れた養生方法ですが、なにせ管理が大変なのであまり使われていないのが現状のようです。
養生方法の使い分け
供試体の養生方法は、いくつかの種類があることがわかっていただけたと思います。
その使い分けのまず第一は、設計図書です。
構造特記に養生方法の指定はあるか、また、適用図書、参考図書にはなんと記載されているかを確認する必要があります。
適用図書が公共建築工事標準仕様書の場合は、その版も確認しておくことが望ましいです。
公共工事標準仕様書など設計図書に適用図書と記載がある場合は、その図書の最新版ではなく、設計図書に記載してる版を使用することになります。
公共工事標準仕様書は3年ごとに新しい版が発行されますが、適用するのはあくまで設計図書に記載の版となることに注意してください。
また、平成25年版までは現場水中養生または現場封かん養生の記載にとどまっています。平成28年版からは標準養生も併記されるようになりました。
まずは、設計図書を確認し、養生方法を確認すること。そして、プラントや第三者試験期間に養生方法を指示すること。
設計図書に記載の通り運用ができない場合は、工事監理者と協議し承諾を得ること。
この手順をしっかり守ることが重要です。
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