建設現場では、さまざまな専門用語が飛び交っています。今回はその中か、通称が一般用語のように染みついている「まんじゅう」について解説していきます。
「まんじゅう」何それ?という用語の説明から、建設現場における「まんじゅう」の役割・重要性を解説していきます。
「まんじゅう」と聞いて和菓子が思いつく方も「まんじゅう」の役割・規定など現場管理手法として知りたい方についても参考になれば幸いです。
では、さっそく解説していきましょう。
まんじゅうとは
「まんじゅう」とは、鉄骨工事において、1節の鉄骨柱を立てる際に鉄骨柱下部に設けるベースモルタルのことです。
正式にはベースモルタルと記載されますが、形状が饅頭型ですので、そこから「まんじゅう」と呼ばれています。
また、『公共建築工事標準仕様書』では、鉄骨工事の章において、「柱底均しモルタル」として記載されていますので、標仕が適用図書となっている場合は、設計図とともによく確認しておくようにしましょう。
鉄骨建て方前に、柱が立つ箇所に饅頭型の土台を制作して鉄骨柱の荷重を受けたり、建て入れ時の鉛直精度を確保するために用いられます。
ここで、鉄骨柱の下部にある円柱状(饅頭型)のモルタルが「まんじゅう」です。
さらに、まんじゅうを理解するためにも、簡単に鉄骨建て方についても触れておきます。
鉄骨柱の1節(場合によっては0節)は、基礎(基礎柱)中に設けたアンカーボルトによって取り付けられることが多いです。
ただ、鉄骨は建てて終わりではなく、そのあとに建て入れ直しとして、鉛直精度を高める必要があります。
そこで、まんじゅうを設けて、鉄骨柱を少し、床レベルからあげておく必要があります。
まんじゅうがないと、いくら建て入れ直ししようとしても鉄骨柱のベースプレートが床に接してしまい、建て入れ直しが困難です。
なお、「まんじゅう」はモルタルを扱いますので、実際の現場管理においては、鉄骨工事ではなく、左官工事となります。鉄骨建て方前に、「まんじゅう」を作っておく必要がありますので、忘れずに手配するようにしましょう。
まんじゅうの役割
さて、まんじゅうの役割についてもう少し深堀していきます。
まんじゅうは、先ほども述べたように、建て入れ直しするために重要なものです。
ただ、まんじゅうは建て入れ直しのために浮かせる以外にも役割があります。
- 建て入れ直しを容易にする
- 柱の鉛直荷重を支持する(基礎に確実に伝達させる)
以上が、まんじゅうの重要な役割になります。
柱建て入れ直しを容易にする
まんじゅうの役割ひとつめは、柱の建て入れ直しのための鉛直精度の確保です。
先ほども解説しましたが、柱建て方後、建て入れ直しワイヤーや建て方ベースといった治具を用いて柱の鉛直精度を調整していきます。
鉄骨柱のベースプレート下部の中心にまんじゅうを設けて、柱の微妙な傾きを調整していきます。
まんじゅうがないと、建て入れ直しで柱を傾けようとすると、ベースプレートが床に接してしまいます。
そのため、まんじゅうは大きすぎてもだめです。
大きい方が柱建て方時に安定はするのですが、建て入れ直しの際に、次はまんじゅうにベースプレートが接してしまいます。
柱の鉛直荷重の支持
次の役割は、柱の鉛直荷重の支持です。
鉄骨柱は、基本的にはアンカーボルトによって支持されています。
ただ、柱には地震等の水平荷重によるか柱脚に発生する曲げモーメントだけでなく、常時荷重として、柱自重さらに柱が支持する建物重量が作用しています。
柱の荷重は基本的に基礎に伝搬され、支持しています。
まんじゅうは、その鉄骨柱底と基礎との間に設けられますので、柱から採用する鉛直荷重を基礎に確実に伝達するという役割も担っています。
鉛直荷重の支持は、まんじゅうだけでなく、建て方、ボルト締め後に、ベースプレート下部全面に詰めるあと詰めモルタルも影響はしてきますが、やはり先に設置していて、ボルト締め付け前から荷重を受けているまんじゅうは非常に重要です。
まんじゅうは、無収縮モルタルが基本となりますので、圧縮強度はコンクリートよりは十分にあります。
したがって、適正に管理されていれば、柱鉛直荷重に対して、まんじゅうの耐荷重不足で圧壊するということは生じないはずです。
しかし、まんじゅうを作ってから鉄骨建て方までの期間が十分に確保できず、まんじゅうの圧縮強度不足のまま鉄骨建て方行ってしまうとまんじゅうが圧壊してしまいます。
また、床打設時の精度や鉄骨製作(作図)ミスや基礎レベルの施工ミスなどで、必要以上に高さをあげたまんじゅうなどをつくってしまい、圧縮だけでなく曲げが作用するような形状になっていると不具合が生じる可能性があります。
まんじゅうが圧壊して、まわりのあと詰めモルタルを押し出してしまった不具合も何件か確認してきました。
以上が、まんじゅうの重要な役割です。
建て入れ直しのために必要なことは、施工していくうえでわかってくるのですが、鉄骨柱の底に設けている以上、建物荷重が少なからず作用していることは、十分に理解して適正な管理をしましょう。
まんじゅうの大きさなどのルール
最後に饅頭の規定を確認しておきます。まず、まんじゅうの高さは、標仕では特記によると記載されています。
必ず設計図書特記を確認するようにしてください。
一般的には、まんじゅうは高さ30mm程度、大きさ300~400mmの円形または正方形とされています。
た、鉄骨建て方の管理としては、アンカーボルトも非常に重要です。
アンカーボルトは、座金を設け、二重ナットで取り付けることが多いですが、アンカーボルトのねじ山がナットから3山以上は出ている必要があります。
鉄骨製作図の段階から鉄骨柱の長さ、ベースプレートの厚み、アンカーボルトのねじ山の長さ、床の打設レベルなどを確認・決定し、ベースモルタルの高さも30mm程度の適正な厚みとなるように計画しておく必要があります。
また、製作図は専門の内勤部署が作成、チェックしたり、仕様の決定や打ち合せは、所長や主任といった上長が行い、若手社員が現場の管理でアンカーボルトをセットすることが多いのではないでしょうか。
鉄骨工事には、基礎躯体が終わり、埋め戻し後1階床を打設してからが本格稼働ですが、アンカーボルトの設置は基礎工事の時点で行う必要があります。
その時に、アンカーボルトの位置の確認だけでなく、アンカーボルトの先端の高さも十分に理解しておかないといけません。
ねじ山がナットから3山以上でないからしょうがなく、まんじゅうをごく薄くしたり不適切な施工管理をしていると、建て入れ直しや鉛直荷重の支持が困難になります。
様々な工種が互いに関連している建築現場ですので、他工種と間を取り持つまんじゅうのような部位は、重点的な管理ポイントの一つになります。
おわりに
まんじゅうについて、言葉の説明から役割、そして規定の確認をしていきました。
まんじゅう自体というより、鉄骨工事全体の管理として、まんじゅうの管理も必要になってきます。
まずは、まんじゅうの役割を十分に理解して、決して適当に作っとけばいいものではないことを理解いただき、現場管理の手助けの一部になれれば幸いです。
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