スポコンという道具をご存じでしょうか。
スポーツに打ち込む努力・根性ものの漫画のことではありません。
スポーツ性能の高いコンパクトカーのことでもありません。
建設・建築現場の世界でもスポコンという資材ものが存在します。
今回は、スポコンとは一体なにか、建築現場においてどう使うのか解説していきます。
スポコンとは
スポコンとは、梁・スラブなどのコンクリート打設時の仕切りに用いるスポンジ製のコン止めのことです。
もう少し詳しく紹介していきます。
スポコンとはそもそも商品名であり、建設資材メーカーとして有名な京都スペーサーが販売しています。
ただ、実際の建築現場では、京都スペーサーから直接購入するよりは、仮設金物工などの協力会社が材工での工事として使用することが多いい印象です。
スポコンは、先ほども紹介しましたが、スポンジ製のコンクリート止めです。
ただのスポンジというわけではなく、スポンジの周りをビニールで覆われていて、コンクリート硬化後でも引き抜きしやすい仕様になっています。
また、引き抜き手+スポンジの補強として、U字型の芯材が挿入されていて、引き抜きの容易さおよびコンクリート側圧に負けない仕様になっています。
スポコンの使い方
スポコンは、梁・スラブなどのコンクリート打ち継ぎとなる箇所のコンクリート止めに使用されます。
スポコン1つ1つは、大きさが80mm×100mm、高さ1200mmくらいのものですので、打ち継ぎ面にスポコンをいくつも設置して、打ち継ぎ部のコン止めとします。
スポンジ製で鉄筋などがあってもある程度潰れますので、スターラップの間などに差し込みコンクリートの側圧にも負けないように鉄筋を利用して、スポコンをがっちりと固定することが重要です。
ただ、通常の配筋では、鉄筋間隔が広くスポコンがしっかりと固定できないような場合や梁せいが高くスポコンだけではコンクリート側圧に負けてしまうという場合では、梁中間にスポコン支持用の段取り筋を設けることもあります。
コンクリート打設当日や前日にスポコンでうまく止まらないことが発覚しても対応として手遅れになる場合があります。
しっかりと打ち継ぎ計画してからコンクリート打設に臨むようにしましょう。
また、スポコンはコンクリートがある程度硬化したら、打設当日に引き抜くことがほとんどです。
コンクリート打ち継ぎ面には貫通している鉄筋(梁の場合は主筋)などもあり、スポコンにも隙間が生じしています。
そこからノロ(コンクリートのうちモルタル成分)が少なからず漏れてきますので、完全に硬化してしまうと引き抜きが困難となります。
スポコンは仮設材ですので、一度使って廃棄ではなく、外装のビニールが破れていなければ清掃して次のコンクリート打設でまた使用します。清掃の容易さからも打設当日中に引き抜きし、水洗いしておくことが望ましいです。
なぜコン止めは必要か
では、そもそもコン止めはなぜ必要なのでしょうか。コンクリートの打ち継ぎは、公共建築工事標準仕様書において以下のように規定されています。
・打ち継ぎは、梁及びスラブの場合は、そのスパンの中央または端から1/4の付近に設け、柱および壁の場合は、スラブ、壁梁または基礎の上端に設ける。
引用元:公共建築工事標準仕様書(平成31年版)
・打ち継ぎ面には、仕切り板等を用い、モルタル、セメントペースト等が漏出しないように仕切る。また、打ち継ぎ面が外部に接する箇所は、定規(小角の類)を取り除き、引き通しよく打ち切り、目地を設ける。
・打ち継ぎ面には、水がたまらないようにする。
・打ち継ぎ面は、レイタンスおよび脆弱なコンクリートを取りのぞき、健全なコンクリートを露出させる
”打ち継ぎは基本的に応力が小さくなる箇所に設ける”が建築工事の基本です。
連続梁や固定端の部材の曲げモーメント意識すると、曲げモーメントが小さくなる箇所がだいたいスパンの1/4付近くらい。
また、せん断力で考えると一番小さくなる箇所はスパンの中央です。
RC造の計算において、曲げモーメントは鉄筋で負担しているので、応力の問題から考えるとどこが打ち継ぎのベストの位置かは定かではないかなと思います。
ただ、打ち継ぎだからと言って必ずしも耐力が低いわけではありません。
打ち継ぎ部は施工による不具合が集まる可能性が高いので、脆弱なコンクリートなどが生じないように処理しておくことが重要です。
仮に、仕切り板(スポコン)を設けずに、コンクリートを打ち込むとどうなるでしょうか。コンクリート打設を止めても、コンクリートは流れ続け、斜めの打ち継ぎ形状になってしまいます。
また、そのうち次の柱にまで流れ込んでしまい、柱の中に落ちたコンクリートは処理が困難です。
さらに、斜めに打ち込まれてしまった梁はどうなるでしょうか。
RC造は鉄筋とコンクリートが一体となって初めて成立する構造です。断面として一体となっていることが重要で斜めに打ち込まれてしまうと梁を例にとると、下筋だけがコンクリートに覆われて不完全な状態になってしまいます。
水平打ち継ぎはするなと監理者から指示されたことはないでしょうか。
どこまで厳密に考えるかは構造設計者の設計思想によるところもありますが、下筋だけがコンクリートに覆われた状態で、一度荷重を受けてしまっては、その後採用する荷重は下筋部のコンクリート断面には期待できないと考えられる方もおります(そうなると、後打ち前提のハーフPCaとかどう考えるんだと施工者思想としては考えてしまいますが、、、、)。
いずれにせよ、コンクリートの打ち継ぎは、脆弱なコンクリートなどは取り除き、引き通しよくシンプルにな面にすることが重要です。
あとは、後打ちのコンクリートの食いつきをよくする(せん断力を向上)ためにも目荒らしがあった方が望ましいかなという程度です。
断面的に十分な性能を確保できていて、打ち継ぎ位置はここと施工計画や打設後の記録を容易に残すためにも打ち継ぎは仕切りを設けるようにしましょう。
おわりに
コンクリート止めスポコンについて解説しました。
コンクリート止めについては、コンくし、ラスまたはエアフェンスなどスポコン以外にもいくつか工法や商品種類があります。
まずは確実にコンクリートを仕切ることができるという前提条件をもとに、施工部位などから最適なもの経済性に優れたものを選んでいきましょう。
建築資材の中では、ダジャレで決めたのか商品名としては一般的に聞く言葉にかけたようなものがいくつかあるように思います。「スポコン持ってこい!」と言われて、気合いだけ持って先輩のもとに走っていかないようにだけは注意しましょう(笑)。
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