建築用語辞典「コンクリート供試体」編です。
今回は、コンクリート供試体とは?の『用語解説』と『なぜコンクリート供試体が必要なのか』、『コンクリート供試体に関するJIS規格』について解説していきます。
コンクリート供試体とは?
コンクリートの強度試験を行うために採取・作成した試験のためのコンクリート試験片のことをコンクリート供試体またはコンクリート試験体といいます。
コンクリートの強度試験は圧縮試験や曲げ試験、長さ変化試験などさまざまありますが、建築現場において一般的にコンクリート試験というと圧縮試験が認識されてます。
それぞれの試験によってコンクリート供試体の形状にも違いがあり、圧縮強度試験に用いるコンクリート供試体は円柱型のものです。
長さ変化試験、曲げ強度試験などでは直方体の供試体を用います。
なお、今回は一般的なコンクリート圧縮強度試験のための供試体として解説していきます。
また、その作成方法は、通常、コンクリート練り混ぜ時や打設時に合わせフレッシュコンクリート(生コンクリート)を専用の型枠材に詰めて作成します。
その他の採取方法としては実際に打ち込まれたコンクリートからコア抜きすることで円柱型のコンクリート供試体を採取する方法もあります。
いずれにしてもコンクリートの強度試験をするために用いる試験体をコンクリート供試体またはコンクリート試験体と言います。
なぜコンクリート供試体が必要か?
コンクリート供試体は、コンクリートの圧縮強度試験を実施するためのサンプルです。
コンクリートは建築物の構造体ともなる重要な部位・材料ですので強度の担保は重要な管理項目になります。
そのために実際のコンクリートが何N/㎟の強度を発現したかを試験によって確認します。
また、コンクリートは生ものであり、硬化とともに強度発現していくものでもあります。
実際に建物の構造設計で用いるコンクリート強度は、基本的にはコンクリート打設28日後の強度(4週強度)で判定するのが一般的です。
しかし、実際に打ち込まれた柱などからコンクリートを採取することは困難です。
先ほどコア抜きという採取方法も紹介しましたが、鉄筋などがあるので、万が一鉄筋もろともコア抜きしてしまうと構造体にも影響を与えてしまします。
また、鉄筋を傷つけずに採取できたとしても採取した部位のコンクリートはあとで無収縮モルタルを詰めるなど補修するしか方法がありませんので、耐久性の観点から弱点となる可能性があります。
そこで、コンクリート打設日に実際に打ち込まれるコンクートを運ぶ同一の生コン車から採取してコンクリート供試体を作ります。
その後、適正に養生をし、28日材齢の供試体を圧縮試験することで強度の確認をしていきます。
供試体の養生方法については別記事でエントリーしてますので、参考にしてください。
JIS規格によるコンクリート供試体
コンクリート供試体は、構造体強度を担保するための重要な試験体です。
さらに、コンクリート供試体は、大きさや形状、突き回数などの詰め方によって発現強度に影響を与えます。
そこで、JIS規格によりコンクリート供試体の形状および作成方法が規定されています。
コンクリート供試体はJIS A 1132;2020 コンクリートの強度試験用供試体の作り方として規格化されています。
形状
供試体は、直径の2倍の高さをもつ円柱形とする。
引用元:JIS A 1132;2020 コンクリートの強度試験用教師他の作り方
その直径は、粗骨材の最大寸法の3倍以上かつ100 mm以上とする。
供試体の直径の標準は、100 mm、125 mm、150 mmとする。
まずこれがJIS規格に規定されている供試体の形状です。
建築の場合、粗骨材の最大寸法は20mmまたは25mmが一般的ですので、基本的には直径100mm、高さ200mmの供試体が作成されます。
コンクリートは密に詰まっているほど強度が高くなりますので、粗骨材の最大寸法に応じて十分充填できるように直径が決められています。
また、供試体の寸法が小さいほど強度が高くなる可能性もあります。これは、供試体が小さいほうが強度に影響を与える軽微な充填不良の不具合の発生可能性が低くなるためです。
作成方法
作成方法もJIS規格により規定されています。
コンクリートは、2層以上のほぼ等しい層に分けて詰める。各層の厚さは、160 mmを超えてはならない。
突き棒を用いる場合 各層は少なくとも1000㎟に1回の割合で突くものとし、すぐ下の層まで突き棒が届くようにする。
突いて材料の分離を生じるおそれのあるときは、分離を生じない程度に突き数を減らす。突き終わった後、型枠側面を木づち(槌)で軽くたたく等して、突き棒によってできた穴がなくなるようにする。
引用元:JIS A 1132;2020 コンクリートの強度試験用教師他の作り方
コンクリートを何層に分けて詰め、何回突くか、叩くかによって充填度合いが変わってくるため、詰め方、回数まで規定されています。
コンクリート打設当日はコンクリート担当者は非常に忙しいです。
しかし、適正な現場管理のためコンクリート受け入れ試験の結果を確認するだけでなく、供試体作成方法も抜き打ちで確認するようにしておきましょう。
コンクリートの試験、供試体の作成は基本的に第三者(施工者でも生コン工場でもない第三者)が実施しますので、JIS規格から外れた作成方法はしないかとは思います。
ただ、私が試験者に聞いたところ供試体の作成の方法次第で、数N/㎟は操作しようと思えば調整することはできると話していました。
なお、今回引用したJIS規格はあくまで一部抜粋ですの、コンクリート供試体のJIS規格を調べる必要がある場合は必ず全文を確認するようにお願いします。
器具の寸法やそれらの誤差など細かに規定されています。
おわりに
コンクリート供試体についてコンクリート供試体の言葉の説明となぜ供試体が必要なのか、コンクリート供試体はJIS規格があることを解説しました。
コンクリートは建築の代表的な材料の一つであることからコンクリートを知っておくことは非常に重要です。また、コンクリートは生コンの状態と硬化した状態で性質が大きく異なるという特徴もあります。
生コンとしてのJIS規格と別に硬化したコンクリートの強度確保のための標準仕様書やJASS5といった参考図書も多くあります。
施工管理で押さえるべきポイントは多岐にわたりますので少しずつ理解を深めていきましょう。
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