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高力ボルト(TC型 S10T)の締付け検査手順を解説|マーキング・ピンテール破断・外観検査のJASS6準拠ポイント

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鉄骨工事の品質管理で毎日のように出てくるのが、高力ボルト摩擦接合の締付け検査です。

現場では「ピンテールが折れているか」「マーキングのズレが適切か」といったポイントで施工管理がされています。
ただ、その管理基準が、なぜそれで合格と判断できるのかを根拠を持って説明できる人は意外と少ないと感じます。

今回はJASS6と高力ボルト協会の技術資料を基に、トルシア形高力ボルト(TC型・S10T)の締付け手順と検査基準を整理していきます。

高力ボルト摩擦接合の原理

まずは原理から話していましょう。

高力ボルト接合は、ボルトの軸力で鉄骨継ぎ手部の母板と母材を挟み込みスプライスプレートを強く締め付け、接合面の摩擦によって応力を伝達する仕組みです。

設計で見込んだ軸力が確実に入っているかどうかが接合部の性能を決めます。

この軸力は直接測定することはできません。
そこで、現場ではトルクやナットの回転角、あるいはピンテールの破断をもって軸力が導入されたとみなす運用になっています。

現場での施工管理ポイントは、この「みなし」が成立しているかを確認する作業だと捉えるとわかりやすいかと思います。

TC型(S10T)と高力六角(F10T)の違い

現場で使う高力ボルトは大きく2種類あります。

  • トルシア型高力ボルト
  • 高力六角ボルト

トルシア形高力ボルト(TC型・S10T)については、記号のSが「Structural(構造用)」、10は引張強さ区分(1000N/mm²級)、Tは「Tension Control」を表します。
専用シャーレンチでナットを回し、所定軸力に達するとピンテール(ボルト先端の突起)が破断する構造になっています。

次に、高力六角ボルト(F10T)です。記号のFは「Friction(摩擦接合用)」、六角頭の高力ボルトです。締付け管理にはトルク法と、1次締め後にナットを所定角度回すナット回転法があります。

どちらも10T級の高張力鋼で、必要な導入軸力の水準は同等です。違うのは「軸力を導入する方法」と「導入したことを確認する方法」のところです。

締付けの3ステップ手順(JASS6)

JASS6では、高力ボルトの締付けを1次締め → マーキング → 本締めの3ステップで行うことを定めています。TC型・F10T共通の手順です。

また、高力ボルトで接合部の締付を行う前野鉄骨建方では、仮ボルトを用いて、建て方時の外力に関わる支持を受け持ちます。

この時、仮ボルトとして、高力ボルトを用いては絶対にいけません。
鉄骨建方時は、建入れ直しなどでせん断荷重が作用します。接合前の高力ボルトが傷ついたりしてしまうと適切な軸力を導入できなくなったり、ボルトが破断するなど不具合や事故に繋がる恐れがあります。十分に留意しましょう。

STEP1:1次締め

接合面を密着させる目的で行う仮締めです。
1群のボルトの中央部から外側に向かって、専用の電動レンチで標準の1次締めトルクを与えていきます。

ここで軸力を入れ切るわけではない、という点を意識しておきましょう。

STEP2:マーキング

1次締め後の全数のボルトに、ボルト・ナット・座金・母材にまたがるように直線でマーキングを入れます。

これがあるからこそ、本締め後にナットだけが回ったのか、ボルトごと共回りしたのか、軸が全く動いていないのか、を視覚的に判別できます。
省略すると外観検査が成立しなくなるので、絶対に飛ばさないようにしましょう。

また、マーキングの書き漏れなどがあってあとから記載するということがあっても行けません。
そのような運用方法がされてないためにも、マーキングが本締め後どの用にずれるべきかを理解しておきましょう。

STEP3:本締め

本締めも1群の中央から外側へ向かって順に行います。外側から締めると内側が浮き上がって接合面が密着しなくなる恐れがあるためです。

順序は施工要領書で明示しておきましょう。

本締め完了の判定

本締めが「終わった」と判断する根拠は、ボルトの種類によって変わります。

TC型(S10T):ピンテール破断

TC型はトルシア形シャーレンチでナットを回すと、所定軸力に達した瞬間にピンテールがブレークネック部でせん断破断します。

ピンテールが破断していれば設計で想定した軸力が導入されたとみなす、というのが基本ルールで、検査では全数について破断状態を確認します。

F10T:トルク法/ナット回転法

  • トルク法:1次締め後の状態から、ボルト径・軸力に応じた締付けトルクをトルクレンチで与えます。検査は施工前のトルク係数試験で決めた「検査トルク値」に対して現場のトルク値が±10%以内かで判定します。
  • ナット回転法:1次締め後のマーキングを基準にナットを120°±30°回転させて所定軸力を導入する方法です。検査はマーキングの回転角が許容範囲内かを目視で確認します。

どちらを採用しているかは施工要領書で明示し、それに沿って判定基準を切り替えます。

外観検査の合格基準

本締め完了後は全数を対象に外観検査を行います。チェックポイントは次の通りです。

  • ピンテール破断(TC型):全数で破断していること。1本でも未破断があれば不合格として再施工。
  • マーキングのずれ方:ナット側のマーキングだけがズレ、座金・ボルト・母材側はそろっているのが正常。ボルトとナットが一緒に回っている共回りや、まったく動いていない軸回り未締付けは不合格。
  • ナット回転量(ナット回転法):1次締め位置から90°〜150°の範囲にあること。
  • ボルトの余長:ナット面から出ているねじ山がおおむね1〜6山程度であること。極端に短い、または長いものは径違いや座金の入れ忘れの可能性があるため、原因まで遡って確認します。
  • ボルト頭・ナットの浮き:座金や母材との間に隙間がないこと。隙間があれば接合面が密着していないので不合格です。

不合格となったボルトは、原則として新品に交換のうえ再施工します。一度緩めて再締めしたボルトは軸力が安定しないため、再使用は認められていません。

受入検査(軸力試験)の取扱い

かつてはロットごとに専用試験機で軸力導入特性を確認する受入検査が一般的でした。

現在のJASS6では製造者の品質管理が安定していることを前提に、製造者の検査成績書による確認を主とし、現場での軸力試験は通常省略できるとされています。
ただし長期間屋外保管されたボルトや湿気を受けた可能性のあるロットでは、念のため現場で軸力試験を行うことがあります。

おわりに

高力ボルトの締付け検査は、一見すると「ピンテールが折れているか」「マーキングがズレていないか」を見るだけの作業に見えます。

ただ、その背景には、軸力で板を締め付けて摩擦で力を伝える接合原理と、軸力を直接測れないからこそ生まれた間接的な確認方法があります。

なぜこの検査をしているのかを理解しておくと、判定が微妙な時に立ち戻る基準ができます。根拠を持って判断していきましょう。


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